モヤモヤ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
心情描写と時代背景を細部まで表現した傑作
坂道のアポロンは1966年の長崎にある「世保東高校」に主人公薫が転校してくるところから始まります。
都会から越してきた薫は田舎の質素さや無礼さに肌が合わないのか最初は苦労するわけであります。ある時学校の屋上で知り合った千太郎とジャズのセッションをすることで次第に意気投合していく…
この作品の肝はArt BlackeyやMiles Davisなどの代表的なジャズ作品を使っている点にありますが、個人的に興味を持ったのは学生運動などの時代背景です。
{netabare}9話で、米軍佐世保基地への原子力空母エンタープライズの入港に反対する学生たちの姿がチラッと出てきます。
これは1968年1月のこと。当時アメリカが介入し泥沼化していたベトナム戦争、それに日本が加担することへの懸念が当時の若者たちをこうした活動に走らせたといわれています。いわゆる学生運動です。
このような若者たちの異議申し立ての動きは全国各地に広がり、大学ばかりか高校でも生徒たちによるストライキやバリケード封鎖などが発生するようにまります。
面白いのはここから。薫が高校1年生の時が1966年。彼が通う「世保東高校」は実在する「長崎県立佐世保北高校」をモデルにしているのですがこの高校、学生運動として有名だったと言われているのです。 {/netabare}
作中でも学生運動がテーマになる回がいくつかあるので、その細部を楽しんで欲しいです。ちなみにこの高校は作家・村上龍さんの母校でもあり当時を舞台にした作品はいくつもあるので読んでみると「坂道のアポロン」の理解も深まると思います。
長くなりましたが、当時の時代背景をうまく絡めた巧みなストーリー、本格ジャズを活かしたセンス、青春の葛藤の描写の面白さ。どれもしっかり作られた傑作アニメです。