「新世界より(TVアニメ動画)」

総合得点
87.4
感想・評価
3349
棚に入れた
15979
ランキング
158
★★★★☆ 3.9 (3349)
物語
4.2
作画
3.6
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

逢駆 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

~栄枯盛衰~

偽りの神に抗え―――――


恐ろしいまでの伏線と緻密に練られた特異な世界観を見事に活かしきった傑作。
「和風SF作品」といった感じの今まで味わったことのない趣きがありました。

舞台は「呪力」と呼ばれる念動力が発達した1000年後の日本。
一見のどかに見えるその世界で暮らす少年少女たちは、
ふとしたことにより人類の血塗られた歴史を知ってしまう…。
そして、やがて彼らに待ち受けている過酷な運命を壮大なスケールで描いた物語。

懐かしさのある田園風景が広がる世界なのだけど、最初は疑問や違和感に溢れた世界。
ゆったりとした平穏さの裏に緊張感や不安感が同居していて常に胸がざわつく感じがします。
けれど話が進展するにつれほぼ全てに納得できて腑に落ちる。
ベースとして細かく作りこまれた世界設定があるので、
そこから転がっていくストーリーには、ふと虚構から現実へ連れ去ってしまうような説得力がありました。

作画に関しては、キャラクターの表情がたびたび崩れていたりしたものの
戦闘シーンなどは迫力があって良かったです。
また各話で演出の個性がまったく違っている点は本作の大きな特徴で
前の話数とは作品の印象が違うなと感じることもしばしば。
ここは賛否が分かれると思いますが、
個人的にはこの良い意味での無統制さにこだわりを感じ好感を持てました。
次に音楽についてですが、特筆すべきはやはり劇伴です。
OP曲がない本作は印象的な劇伴のテーマが多くあります。
一定の音によって不安を煽るようなものや、逆に平坦な会話に大きな抑揚をつけているものなど…
そのどれもが台詞を大切にしているようで劇伴の重要性を改めて感じました。

本作は主人公たちが12歳、14歳、そして26歳の時といった3部作となっています。
序盤は説明がほとんどなく物語が進行していくため世界観を把握することが困難かもしれません。
しかし本作は主人公・渡辺早季の手記という形で書かれたものなので、
完全に理解しなくても早季の言動や心理に意識して観るとある程度わかるので大丈夫だと思います。
それでも分かりづらいという方のために、少しだけ用語と世界観の説明を。

・呪力:千年後では誰にも備わっている超能力で、これにより世界は支えられている。
 脳内で形成されたイメージを具現化させる能力だが、誰もが常にどんな現象でも
 起こせるわけではなく、使用者の特性に個人差がある。
・神栖66町:主人公たちが暮らす人口およそ3千人の小さな町。
・全人学級:子供たちが呪力に目覚めると通う学校で、一般教養と呪力を学ぶ。
・バケネズミ:ハダカデバネズミから進化した知的生物で、人語を話せるものもいる。
 呪力を使う人間を神と崇め服従している。
 女王を中心とするバケネズミの集団をコロニーという。
・八丁標:神栖66町と外界とを区切るしめ縄。
他にも独特の用語が多数でてきますが、上記を覚えているだけでもだいぶ分かり易いと思います。

◆人類の血塗られた歴史について…
{netabare}人間が初めて呪力を得たのは西暦2011年。
その幾人かがその能力を行使して様々な凶悪犯罪をする。
そして能力者と非能力者との戦争に発展し、世界中の国が崩壊してしまう。
その後、一部の能力者が多数の一般人を支配する奴隷王朝などが誕生し数百年続く。
絶滅の危機に瀕した人類は、遺伝子を改良し人間を攻撃できない仕組みを組み込んだ。
それが攻撃抑制と愧死機構。
攻撃抑制は人間の攻撃的な衝動を抑える心理装置のことで、
愧死機構は対人攻撃をした場合に、攻撃した方が死に至る仕組み。{/netabare}

・悪鬼:子供たちが幼少時から学校で繰り返し教えられる神栖66町に伝わる怪物。
{netabare}正式名称を「ラーマン・クロギウス症候群」という精神病質者を指す言葉。
最大の特徴は、攻撃抑制と愧死機構が機能しないこと。
そして、相手から反撃を受けるかも知れないという恐怖から大量殺人を止められなくなるという。{/netabare}
・業魔:呪力を持ちながら、己の業により“人間ではないもの”へと変化した存在。
{netabare}医学的な名称は「橋本アッペルバウム症候群」という治療法が発見されていない病気。
無意識の暴走により呪力の異常漏出が起き、周囲のものすべてに破壊的な影響を与えてしまう。{/netabare}


今日の真理は明日の虚偽かもしれない。
本作は人間の持つ“業の深さ”というものを圧倒的描写で描き込まれていました。
そして見えてくる「人間とは何か」「何が正義で何が悪なのか」といった普遍的なテーマ。
前半は話の本筋が見えづらく疑問が多くありましたが、
終わってみれば心にずしりと残る大器晩成型の素晴らしい作品でした。

この物語は主人公が千年後の子孫に宛てた手記として書かれたものなのですが
同時に主人公の千年前、つまり現代の人類に対しての警鐘でもあります。
そして最後のメッセージに込められた想い。
作品を最後まで観たからこそ響く重たい言葉でした。
ひとりひとり感じるものは違うと思います。
みなさんは何を感じ、何を想うでしょうか。そしてそこから生まれるものとは…?


新世界より

投稿 : 2013/04/04
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サンキュー:

65

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