ローズ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
真桜湯
魔王を倒すために戦ってきた勇者。
ついに魔王のいる場所までたどり着いていざ戦おうとしたのだが、魔王と勇者は話し合う事となってしまう。
魔王と勇者は、戦争を終結させるために協力関係となって世界を変えていく事となる。
魔王や勇者が登場するのでロールプレイングゲームのような話の展開になると思った方には大変申し訳ありません。
戦闘や魔法の要素もありますが、どちらかと言うと”戦争”としての戦いの方が主眼です。
作品内容としては、政治・経済・宗教などの社会を構成している要素が多分に出てきます。
物語の舞台ですが、階級社会によって少数の権力者が多数の人民を支配している世界です。
魔王は、生活の基盤となる農作物を生産して多くの人民を飢えから救う事から始めて、教育によって誰しもが豊かになれるように指導していきます。
人民を飢えさせない事は、政治の基本ですね。
宗教も色濃く使われています。
宗教を使って権力を握り、多数の人民を支配する・・・。
このように政治的な利用するための宗教は、今も昔も変わりません。
例えば、日本においては江戸時代の寺請け制度・戦前の国家神道・現在は・・・書いたらマズイですね^^;
普段の生活に宗教は関わっていないと思う人もいると思いますが、正月の初詣やクリスマスなどの年中行事は、現在の日本にかなり浸透しています。
日本古来の宗教である古神道は自然崇拝の多神教なので、他の宗教に対して寛容な下地が残っているのでしょう。
”神”という誰も見たことが無い理想的な存在によって、多くの民衆は信仰という形で支配されています。
信仰しない人に対して異端者の烙印を押すことによって信仰を強要している姿は、権力者に都合の良い方法です。
多くの人民から富を搾取することによって一部の上級階級が豊かな生活を送る・・・。
この姿は、現在でも変わらないですね。
誰しもが豊かになれる社会を作る事は難しいです。
人間には欲望が必ず付いて回ります。
その欲望を原点として現在の資本主義が成り立っています。
理想の社会を作ると言っていた共産主義は崩壊しました。
現在の社会では人権を尊重すると謳っていますが、権力者にとっては都合の良い方便なんでしょう。
人権をネタに他国に干渉していますが、自国と相手国との考え方の違いを統一するのは難しい気がします。
日本での人権は、選挙権の一票の格差で内情が分かると思います。
第9話の大衆に訴えかける場面は、名場面だと思います。
このシーンでは大衆に向かって演説していますが、視聴者側に問いかけている内容でもあります。
心が震える場面と表現しておきます。
(ちなみに疱瘡(ほうそう)という表現がでてきましたが、現在では天然痘と言われています。
作中の他の場面では天然痘という言葉も使われているので、この箇所に関しては統一性がないです。)
単純に楽しめる作品という訳ではないので、一般受けするかどうかは疑問に思います。
ただし、現在の豊かな社会を享受している多くの人に対して、今の生活が不変では無い事を伝えるには十分な内容です。
面白いと思えるかどうかは分かりませんが、本作品によって自分自身の見聞を広くするキッカケになれば成功であると考えます。
未曽有の天変地異が起きてカクカクシカジカの非常事態の時に「直ちに影響はありません。」と言うばかりだった政府発表など、
都合よく政治利用されたマスコミの情報だけを何の疑問も持たずに鵜呑みにしている人達には響かない作品だと思いますけれどね。