maruo さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
腐女子の「腐」の字はどう書くのっ? B+
原作未読
私は、以前、「腐女子の品格」というベスト10を作成しました。その後、この作品の存在を知り、ぜひ見なければと思い視聴してみました。
【腐女子】BL(ボーイズラブ;男性の同性愛)を好む女性の自虐的呼称です。広義には、オタクな女子全般を含める場合(アニメ「海月姫」のケース)もあるようですが、この作品では狭義の意味で使用しています。
この作品の位置づけはというと、腐女子向けの作品というよりは、腐女子のことを良く知らない人向けの入門篇といったところです。腐女子ならば常識であろうことが多く出てきていると思うので、入門篇と考えたのですが、実際のところ私は余り詳しくないので、内容にどれだけの真実味があるのかはちょっと不明です。ただ、入門篇といっても、一般の方が手にとって見るというのは、誰かに勧められたという事情でもない限り、ちょっと想定しがたいので、ある程度アニメ好きの人(~アニメオタク)に向けた作品であると思います。
レンタルで借りたDVDを再生してみて、いきなりびっくりしました。まず衝撃の映像が目に飛び込んできたのです。「えっ、ハードゲイ!?」・・・と思ったら新作紹介でした。人によっては視聴を止めるレベルの作品紹介だったので、本編再生前に置くのは考慮が必要なのではないかと思いました。ちなみに、「課長の恋」という作品で、ハードゲイ・コメディーのようです(あにこれにまだ登録されてません)。まあ、この作品も見てみるつもりですが(笑)。
閑話休題。
さて、実際の内容はごく大雑把にいうと、新米腐女子の「ふじょこ」が、職場の先輩腐女子「貴代」に、腐女子として様々な指南を受けるというものです。
この貴代ですが、腐女子としてのレベルが高いというだけでなく、成熟した大人としての品格も持ち合わせている人間として描かれています。趣味は趣味として極めつつ、周囲に上手く溶け込むことができ、かつ、「できる」人間であること、これを称して「品格」と言っているのだと思いました。
これに対して、ふじょこは、時に上司の前で同人誌設定を熱く語るという、よくアニメで見るステレオタイプ的な腐女子です。では、ふじょこが、「品格」を身に着けるためにはどうしたらよいのかが描かれているのかと言うと、必ずしもそうでもありません。あくまでも腐女子としてのレベルアップ(又は四方山話)に終始しているといった感じです。
ですから、このアニメのタイトルとして「品格」の言葉があることは、余り適切ではないのではないか、と考えてしまいました。ただ、余り堅苦しく考えることなく、単に語呂がよかったり、印象的な効果を狙ったものと考えた方がよさそうです。私が同一タイトルのベスト10を考えたのはそんな理由ですから。
なので、余り気負わず気軽に見るのが良いと思います。用語解説もちょくちょく出て来るので、見進めるにあたって特に障害はないでしょう。腐女子に関する知識を得ていく入門篇としての内容のほかにも、2次元オタとして共通話題(コミックマーケットに関して)もあったり、オタクじゃない人でも共感できる話題(秘蔵本の隠し場所)も入っていたりしますので、共感できることもあるのではないでしょうか。。
そして、私が最も興味があったのが、腐女子の恋愛についてです。
腐女子の日常生活に彼氏(又は彼女)が入り込む余地があるのか。腐女子であることをカミングアウトするタイミングはいつが適切なのか、そもそもカミングアウトするべきなのか。二次元と三次元は比較するものではないということを、彼氏(又は彼女)が理解してくれるのか。萌えと恋愛は両立させることができるのか・・・。悩みは尽きないでしょう。勿論、万事解決させる方法が描かれている訳ではありませんし、そんなものあるはずもないことは、言うまでもないことだと思います。
私が思ったのが、この文章の「腐女子」を「オタク」と置き換えてみても、そのまま意味が通じてしまうことです。恋愛問題に関しては、腐女子に特有の問題ではなく、オタクにとっては普遍的なテーマではないでしょうか。私は変人の嫁を娶ったので全然問題ない(嫁は元アニオタでもありますし)のですが、現在、彼氏・彼女がいない人(いてもカミングアウトしていない人)にとっては切実です。このことを一緒に考えてみるというのも、本作の楽しみ方(悩み方)の一つなのではないかと感じました。
あと、この作品が直接に問題提示している訳ではないのですが、一つ重要だと感じたことがあります。我々オタク(この文章を読んでいる貴方も勝手ながら含めています)は、普通と自称する人々から偏見を持たれ、偏狭な態度をとられることがあると思います。浅い理解しかしていない人に、それがオタクの全てと思われることなんて、ざらにあるでしょう。ただ、普通の方々は、特定の物事にさほど執着しない(=深い知識を得る努力をすることが少ない)と考えれば、理解を求めること自体に無理があると言えるのです(私の偏見入りまくりですが)。
然るに、オタクである私たちも、腐女子に対して偏見を持っていないでしょうか。自分が一番嫌う行為を、自分自身がやっているのではないでしょうか。そうであるとするならばこれは差別内差別です。できれば、このような問題意識を持ちつつこの作品を見た方が、おかしな誤解が生じずに済むと思うのです。この作品は、興味を惹きやすいように面白おかしく描かれていますが、腐女子の実情はさらに深く、かつ千差万別であること。生理的に嫌だと思う気持ちがあればそれは止むを得ない面がありますが、それを以って蔑んだ目で見ることは極力避けること、などです。
長くなったのでまとめに入ります。
この作品は、コミカルに作られていますが、笑いがこみ上げてくるという程のパンチ力はなかったと感じています。ただ、なるほどと思ったり、一緒になって考えたりするような内容も含まれており、なかなかに興味深い作品ではありました。オタクの方は見てみる価値はあるのではないでしょうか。オタクでなくても、特定の物事に没頭することに理解を示す人にならば、勧めてみるのも一興かと思います。しかし、普通中の普通の人には決してお勧めできるものでははありません。偏見を助長するだけで、「キモイ」と言われて終わりでしょう。そういう人にはジブリを勧めてください。
最後に一つ疑問を。腐女子の方は、「矢追純一」にはピクっと反応するのでしょうか?
【やおい】男性同性愛を題材にした漫画や小説などの俗称。