ツキ さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
新世界より
2012年秋からの半年の間で最も楽しめた作品です。
小説も文庫本で全三冊のボリューム、独特な世界観に加えこの世界における専門用語も多い中で原作未読の私にも十分に楽しませてくれた制作陣には文句なしで太鼓判。それと同時に感謝です。視聴終了後のこの満足感と喪失感は久々に味わいました。
ただそうは言いつつも序盤では特に好き嫌いが分かれ色々と置いてけぼりにされる印象はあるかと思います。
長く続いた戦乱期の終焉と共に人口は激減し、そこにいるのは攻撃抑制と愧死機構を遺伝子に組み込まれたPK取得の人類。祝霊前の人間もその後に和貴園から全人学級へと進むが不浄猫やラーマン・クロギウス症候群、橋本・アッペルバウム症候群に関する謎等にも不安を覚える・・・とか言われても何のこっちゃって感じだと思います。
それでもこういった部分が魅力に拍車をかけてるのも事実。作品全体から感じる陰鬱な雰囲気とぴったり合って理解させようとする集中力を駆り立てます。叉、その後の伏線としても序盤の展開はしっかり機能され無駄のない描写。二回目以降の視聴ならより見せ方の上手い描き方であることが分かる筈でしょう。
物語の見せ場は中盤以降。人によってはそこに至る前に断念する可能性があるように見えますが、ストッパーの如く挟まれている5話、10話の出来が抜群です。
特に10話に関しては圧巻の一言。ここ数年で見たアニメの中では最高の一話であると断言できます。ストーリー上でも特別なこの一話をより独特な雰囲気で映す情景やカットの数々。話の構成をここまで上手く表現できる感性は素晴らしいとしか言いようがないです。これぞまさに「演出」。
私は普段制作に関わる人の名前は気にしない…と言うか気にしても誰もが知ってる監督程度しか知らないので注目することはほぼないのですが、この二話はともに山内重保さんという方が演出担当のようです。著名な方のようですね。とにかく是非是非見て頂きたい一話です。
終盤は物語最大の見せ場。陰謀、恐怖、策略と様々な要素が絡み合い目の離せない息詰まる展開の連続。
その分展開任せな部分も強く、説明不足や演出にぬるさも感じました。
{netabare}個人的には早季が瞬を追うシーンは凄く勿体無かった。必死に追った先にいる瞬は現在の早季と年齢差が感じられなくて、やっと見つけた存在なのに幻影っぽさがあまりないですよね。そういった意味での作画には多少不満はありました。このシーンの前後にある瞬の心の声もどういった理由で早季に響いているのか説明不足。悪鬼(もどき)が自分をバケネズミだと認識していたという仮定も、自らの手や体を見れば自分が周りとは異端であることに気付くのでは?等々しっくりこない疑問は増えていきました。
最終話ではスクィーラ寄り、というか人間の醜さを色濃く描いたように感じましたがこれは作者の意向なのか監督の意向なのかも気になりますね。そういった意味でも原作を読んでみようと思えました{/netabare}
万人に受ける作品ではないと思いますが個人的にはとてもオススメしたい一作。本来ならネタバレありで好きなようにガシガシ書こうかなと思ったのですが、より多くの人に作品を見て欲しいなと考えバレなしで投稿してみました。あにこれ登録以来そんな風に考えたのも初めてでした