りゃむ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
愛と温かみを知るからこそ孤独や憎しみを知る
カニバリズムというよりは、ただの“生”への物語だったように感じました。
例えば2匹の金魚を同じ水槽に入れえさは与えず、しかしそれ以外は生存可能な環境を整えたとします。
結果は火を見るより明らかで、必ず共食いが起こるでしょう。
この物語の中で起こっているのはそういうことです。
他の知性の低い生物であれば“生存本能”として片付けられてしまう。
それが人間であった場合責められるでしょうか?
アシュラが若狭に出会ってしまったこと、心を知ってしまったことは彼にとって不幸だったのではないかとも思います。
もし、野生に身をおき“生きるためだけに生きる”ことをし続けたならヒトには成れずとも、苦しみ、悲しみ、憎しみ、嫉妬、孤独を知ることは無かったのです。
この物語の中のような環境下で、“それでもヒトであれ”とするこの作品のメッセージはとても高尚ですばらしいものだと思います。
しかしそれは幸せと平和に慣れ“最低限度の生存”が容易に許された人間に対するメッセージでしかないとも言えるかもしれません。
ヒトであり続ける幸福を求める代わりに、同じだけの苦しみを支払うか、生きる為にヒトを捨てる代わりに容易な生を選ぶのか・・・
衝撃的で、問題作。込められたメッセージもやはり衝撃的で安易に答えを出せるような問題ではありませんでした。
一見の価値ありだと思います。
ちなみに・・・キャスト陣の豪華さとフルCGで手書き感を演出する手法。これらだけでも一つのアニメーションとして見る価値があると思います。