ローズ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
天才は忘れたころにやって来る
学校の問題児というレッテルを貼られている人が集まっているさくら荘。
神田空太(かんだ そらた)は捨て猫を不憫に思い飼育していたが、学生寮ではペットを飼う事が禁止だったために学生寮からさくら荘へと引越しをする事となる。
すでに入寮していた先輩の上井草美咲(かみいぐさ みさき)、三鷹仁(みたか じん)、同学年の赤坂龍之介(あかさか りゅうのすけ)、空太の後から入寮してきた椎名ましろ(しいな ましろ)、青山七海(あおやま ななみ)などの人物を中心としたラブコメ作品。
天才と呼ばれている人物が、その才能のために周囲の人間から距離をとられて離れていくという話は、昔から結構使われている話の筋だと思います。
世界的な天才画家と言われている椎名、アニメ制作の才能を高く評価されている美咲、プログラマーとして活躍している赤坂について作中では天才の扱いをされています。
美咲の才能と釣り合っていないと自覚している仁、声優になることを目指して努力している青山、
漠然とした目標しか持っていなかった空太達は、ごく一般的で普通な才能の持ち主として描かれていて、
天才と一般人との才能の差を視聴者側に分かりやすく理解してもらうための人物設定だと考えます。
(美咲と仁を対にして考えたので、仁を一般人のカテゴリに入れました。)
天才だが俗世間からはとてもかけ離れている生活をしている、という典型例を椎名を使って表現しています。
自分一人では服すらも着れないため「ましろ当番」という椎名の世話役係が作られるぐらい、
ある特定の事に対して夢中になり過ぎてしまい自分の世界以外が見えなくなる、という天才にありがちな設定です。
さくら荘の住人の恋愛感情が交差していながら、青山の声優オーディション・文化祭でのアニメ制作・さくら荘の存続を求める活動・美咲や仁の卒業式などを経て、才能の有無に関係なく、さくら荘の住人の一人一人が人間という同じ立場であるという事を伝えたいのだと考えます。
さくら荘の住人だけでなく世間一般の全ての人達が同じ人間なんだよ、というメッセージなのではないでしょうか。
この事については、現実世界でも通用する考え方だと思います。
(同じ人間だからという考え方を都合の良い解釈をして、自分は何の努力もせずに他人と同じ立場だと主張する勘違いの人も世間には多いです。)
詩人の故・相田みつおさんも言っています。『にんげんだもの』と。
作中のメインヒロインの椎名ましろが、この作品の鍵だと考えます。
さくら荘へ来たばかりの時は、自分の思考以外への興味・関心の無さがありました。
しかし、さくら荘の住人と接していくうちに感情など、本来の人間らしさが垣間見れるようになります。
空太に対する接し方も恋愛感情を持ったのでは、という感じに少しづつ変化しています。
そして”ましろ”という名前です。
作品の最後のほうで1枚の画を完成させますが、今まではずっと真っ白だった椎名のキャンパスにさくら荘の住人が描かれたという事が、椎名にとって初めて人間としての成長の証拠であると考えます。
椎名の心の目に映った事象そのままを描いた作品が、白の無地から鮮やかなさくら荘のメンバーを描かれた1枚の画となったのでしょう。
原作をアニメ制作者側の都合によって改変した場面があるそうですが、その点だけを突いても作品の本質が変わらなければ、特に気にならないです。
(個人的な意見ですが、病人にはお粥のほうがいいと思います^^;)
個性的なキャラクターやテンポよく進むストーリーなので、2クールでも退屈せずに観る事ができる作品でした。
【補足】
神田空太君をゲームの世界に就職させるのは、もったいないです。
ツッコミ担当として、お笑いの道へと進んだ方が良いと思うのですがw