ソラ さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
旅というタイトルだけで旅好きな私はつられてしまって視聴。
旅人の少女キノが喋るバイク(エルメス)と共に旅をしながら様々な国を訪れて様々な人々と触れ合っていくファンタジー。基本は一話完結。
旅人とはどういう生き物なのか。人間が旅をしようとする意義というのが本作の主題。
主人公は様々な国や国民を客観的に見ながら、時折、国民に感情移入して緩やかに心が揺れ動く姿が目立つ。
そして、主人公の過去話も交えながら、旅人と国民。二つの立場の違いを強く表している。
旅人は旅人のルール、国民は国のルールを持って生きている。
この二つの生き方の違い。というものがまた旅人と国民という人間性の違いを表している。
国よって違う独特な風習のある多くの国々は皆、平和を求めている。
平和を求めているが上に独自の法律を考え、それに対しての純粋さ、そして従順な姿には目を惹き付けられる。従順が上に自分達を束縛する姿はやりきれなく、切なく、悲しい。そういう話が多かったり、たまに登場人物達の主張が極論過ぎて描写が雑だなと思う時があったりしますが
後味の良い話もあってそれぞれに見応えがありました。
{netabare}特に魔法使いの国での人が空を飛ぶシーンでの飛んだ瞬間は清々しく、
それを見て高揚感を持った子供の喜ぶ顔が印象的で忘れられない。{/netabare}
国々でのエピソードで取り扱われる題材も幅広く、社会批判を促す話が多くて、人格権の侵害を主張しているような話だったり、弱肉強食つまりは格差社会、富国強兵を象徴しているような話。時には命の代価、宗教が関わっていたり。深層心理、哲学などもあったりします。こう書くと難解のように思われがちですが登場人物一人一人の考え方はシンプルなので、観ているだけでも感じれるものがあります。そして基本は一話構成なので、くどく表現がされていない。旅人っていう目線、他人以上知り合い未満というスタンスを終始守って構成されている。
{netabare}図書館での人民に読書を許可される本が区別されるエピソードなんかは現代で言う
青少年保護育成条例(主に有害図書の有無)なんかが思い浮かび、
2次創作という存在によって現実と虚構の区別がつかなくなり、犯罪に至るケースを危惧していた。いわゆるフィクション論争っていう、言い始めたらキリがない人格権と哲学が混同した話題でもあるのですが。
多数決の国での話は独裁政治や公職選挙法のアンチテーゼを示していたりと面白かった。{/netabare}
主人公は銃の使い手で運動神経もいい。たまに命を狙われたりもするので戦闘シーンもある。アクションシーンの動きに関しては特筆するものはないのだけど、数少ない戦闘シーンでの緊迫感のある登場人物の生と死の駆け引きは見応えがある。声優の起用は不満に思った人も多いと思いますが、主人公は旅人なので淡々と話す棒声のほうが他人行儀さが出ていてごく自然な感じがあっていい。そして、地味に脇役が豪華です。
作画は評判通り、顔の作画が主人公を筆頭によろしくない。背景も雑なところがあったり(コロシアムの観客が菜の花畑みたいになってた)。
しかし、常時画面に薄い横線が入っている特殊効果がレトロな雰囲気をつくり出すことに成功していたのは良い点。
作画で悪かった部分があったのは認めますが、話自体は充分面白いのでおすすめです。