にゃんた さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
巧妙な視点操作
(原作既読)
1:優れた点
序盤は世界観をゆっくりと明らかにしていき、視聴者の思考をそこに集中させる。
その後、世界観の全貌を見せると同時に物語を急加速させることで、
肝心な部分について疑問を抱く暇を与えず、
そのまま大きなカタストロフィに持っていく。
そこで衝撃を受けると同時に、物語全体のメッセージについて考えさせられる。
作者によって、巧妙にこちらの視点を操作されていたんだと、
最後に気づかされる仕組みが素晴らしい。
1話ごとに立ち止まってじっくり考え込むより
なるべく一気に視聴した方が、制作側の意図に乗ることができるはず。
2:不満点
(1)目的地に向かう道中の描写が一本道で単調
(原作がそのように構成されていたのでやむを得ないが)
背後で動く他のキャラクターの動静や、
組織間の駆け引き・対立などもリンクさせて並行して描き、
奥行きと緊張感を持たせるくらいのアレンジもできたように思う。
(2)キャラデザインが可愛らしすぎる
作中には{netabare}同性間の性行為{/netabare}の描写がある。
これは、原作では私達の世代との種の違い、及び種を維持するための変化(進化)を象徴する重要な描写として位置づけられるイベントなのだが、
可愛らしいデザインのアニメキャラがこれをすることで
「BL」だの「百合」だのという、
アニメお約束の1つの「ジャンル」として捉えられる可能性がある。
これでは原作が意図したモノと大きくかけ離れてしまう。
全編を仮に「精霊の守り人」のスタッフが手がけたら、また違った趣のシーンになったのではないだろうか。
3:メッセージ部分に関する私見
{netabare}「種の維持発展」という、生物の本能に基づく行動について
その種の視点(主観的視点)で見た場合はどうか。
では、他の種の視点(客観的視点)で見た場合にどう見えるか。
そのうえで、そんな本能に基づく行動をどう評価するか。
これが本作品から私が感じたメッセージ部分。
人類をはじめ多くの種が、他の種から直接的・又は間接的に利益を得て生存・発展するものである以上、
その生存が無意識ではあっても相当なエゴイズムの上に成り立っているのは当然だと思う。
だから、醜く汚いのも当然で、エゴであることのみを批判すべきではない。
しかし、他の種をないがしろにするほどの過度なエゴイズムや種の能力強化は、
結局自らの種に対する危険を発生させることになる。
このことを、客観的視点から見ることで理解できる。
これは結局、人類という種の存在を脅かす原因が、
人類そのものから生じるという内部崩壊を警告するもの。
常に自己の行動を客観的視点から観察しながら、行動を選択していくべき。
という、結論となる。
ベタな例をあげれば、他の種に配慮し、「生態系や地球環境を破壊してはならない。守らなければならない」
という思考になるのかもしれないが、そこで語られる生態系や地球環境も、
人類が生存発展していくうえで、人類に都合の良い生態系や環境のことを指すわけで、
結局、「人類のため」を基準に考えているエゴ思考といえる。
このようなエゴ思考に基づく種の行動を、肯定的にとらえるのか、否定的にとらえるのか。
作中では、人格指数に優れているとされた早季の選択には、かなりエゴなものが目に付き、
個人的には嫌悪感を抱いた。たとえば
・一人になりたくないからという理由で最終兵器発動を阻止してしまう
・忠実に尽くしてくれた味方(他の種族)を犠牲にして天敵を倒す
など、ほぼ直感にしたがって大きな選択をし行動をしてきた。
しかし、このようなエゴ思考を自然に実践できる点が、
種の存続発展のために必要だと富子様は判断したのかもしれない。
新世界より送られてきた早季の手紙を、旧世界の我々はどう受け取るべきだろうか。{/netabare}