ふりーだむ さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
高校生活を舞台にしたライトな推理もの。~追記
以前より評価(?)の高い作品ということで、「私、気になります!」的に思っていた作品をようやく見ることが出ました。
原作は未読です。内容の相違等ありましたら、ご容赦ください。
舞台はごく普通の高校。同校OGの姉の勧めで古典部に来た折木奉太郎。典型的なものぐさ(自称省エネ)人間の彼が、廃部寸前の古典部にいた部員、千反田えるが幼き日に聞いた古典部にまつわる話を思い出したいという彼女の願いを受け、奉太郎は友人、里志と麻耶花とともに、過去に起こった神山高校の事件と残された文集「氷菓」の謎を追っていくことになる。新生神山高校古典部の活動の記録(?)的作品。
いろいろな話を聞き、見る前から結構ハードルが上がっていたなと思いましたが、なんのことはない、見たら見事に1話から引き込まれました。
自称「省エネ人間」奉太郎が千反田えるの「私、気になります!」につられ、高校生活の中に起こる様々な疑問を解き明かしていく筋立て。
主に3本の大きなシナリオと数本の短編で構成されており、
えるの幼き日に聞いた話の謎解きとなる、学園祭「かんや祭」にまつわる話
学園祭出展用映画の未完成部分にまつわる話
学園祭中に起きた連続盗難事件を追うお話
と短編数話といったところでしょうか。
それぞれの大きなシナリオはどれも完成度が高く、終始緊張感のある展開でどんどん続きが気になるような感じでした。
天才的なヒラメキを持つ奉太郎が様々な情報と並外れた構成力で「推測」で様々な事件、謎を解き明かすというスタイルは某作品のアリスや、分厚い本で有名な作家さんの作品の陰陽師のような「お座敷探偵」的な感じがしました。といってもその両作のような血なまぐさかったり、陰湿な内容はなく、あくまで高校生活の中に起きたいくつかの疑問・謎を解き明かしていく、という爽やかな感じがしました。
背景や風景なども近年の作品らしい綺麗な画で、登場人物もそれぞれ個性が有り、高校生らしい悩みを抱えていたり、とてもリアリティがある人物描写だったと思います。シナリオ、人物、背景など、「謎解き」作品という重苦しさを感じさせない、非常に見やすい作品だったと思います。
その最たるは、やはりえるちゃんの「私、気になります!」にあると思います。中盤以降このセリフが出そうになると奉太郎が露骨に嫌がるさまなど、このセリフで物語が動き出す感が良かったですね。
短編一つ一つとってみても丁寧な作りで、登場人物を繰り返し登場させたり、むやみに増やすことなく、高校、その周辺という狭い地域の中の物語というのをうまく表現し、その中における人物描写も物語の流れに沿った会話などで、見ている側の興味を引く作りだったと思います。
最初の、古典部の文集「氷菓」にまつわる、関谷純がその悔しさと悲しみを文集の名前に託した経緯を見事に解き明かし、誰も知ることのなかったその意味をえるに伝え、「強くなれ、弱いままなら悲鳴を上げられなくなる日がくる」というと言葉で怖くなり泣いたことを鮮明に思い出す。
学園祭に出展する2年F組の自作ミステリー映画の結末を求めて探偵役に選ばれた奉太郎たち古典部。一度は解き映像化されたものが脚本担当した生徒の本当の意思ではないと否定され、再び考えなおし、死者は一人も出さないという脚本担当・本郷の意思、それを演者の独断で変えてしまい映像化してしまった入須の真意を見抜き、本郷、入須のそれぞれの思いを口にする
学園祭で「怪盗十文字」によるクリスティの超有名作に倣い次々に各部からものが盗まれるというハプニングが起こる。一方麻耶花は漫研の中で起こった問題のために「夕べには骸に」という同人漫画を探す。店番を担当した奉太郎の「わらしべ」によって姉・供恵によってもたらされた「夕べには骸に」により、田名辺によって起こされた事件と真意を解明する。
どのエピソードも、シャレが効いてたり、納得するような解明と説明、そしてそれぞれの思いがよく描かれており、スッキリ感というか爽快感というか、後味の悪さを残さないそれぞれのエピソードが短編を含め、良い締めになっていたと思います。
最終回の「遠回りする雛」は1話完結ながら良い作品でした。「狂い咲きの桜」の下を通る「生き雛」の姿を見るために男衆の思いで起こったハプニングをえるの依頼で解き明かす筋立てでしたが、桜の描き方、その下を通る「雛」の行列、そして最後のえると奉太郎の二人の会話、どのシーンもこの上なく美しく描かれており、内容もさることながら映像美に見とれてしまいました。最後の自分意思を話すえると、自分の思いを飲み込んでしまった奉太郎。原作は続いているようなのでこの二人の今後の距離感が気になりますね。
作品のイメージとして、声優好きの私としては奉太郎&里志のコンビがCLANNADの朋也と春原コンビだったのが作品に入りやすかった要因の一つでもあります。
なんにしても、会話中心の、新感覚で、高校が舞台となる作品で新鮮なイメージのこの作品、見る前の評判以上に面白く見ることができました。
11.5話も楽しませていただきました^^えるの水着姿に照れる奉太郎が可愛かったですね^^
「氷菓」は評判通り「評価」の高い作品でした^^面白かったです。。。。お後がよろしいようで。m( __ __ )m
2013年9月18日改稿
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何度目かは忘れましたが、見返して、思うところがあり追記します。
21話「手作りチョコレート事件」、22話「遠回りする雛」
里志の「僕は麻耶花にこだわってもいいのかな」と奉太郎の「俺の省エネ主義が致命的に脅かされている」
この二つの言葉が気になりました。
「こだわること」のつまらなさに気づき「『こだわらないこと』にこだわることを決めた」里志。
「省エネを信条とし、「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に、だ。」を掲げる奉太郎。
似ているようで似ていない、似ていないようで似ているこの二人。
ともに、「自分が自分である要因」を女の子によって打ち消されようとしてる時の「本音」の言葉。
バレンタインのチョコを受け取らなかった一年前の結論を先延ばしにし、今日に至った里志。
「恋」という「省エネ」のきかない「衝動」に揺らぐ奉太郎。
その二人の心の「揺れ」を「雪」と「桜」という美しい背景の中で描かれていたように思えました。
奉太郎の「ヒラメキ」による謎解きが本作の「見どころ」であるとは思いますが、奉太郎、里志、麻耶花、える、この4人の高校生らしい、淡い恋模様も一つの見どころであると思います。
原作には「ふたりの距離の概算」という「続き」があるようですが、もちろん未読です。ですが、いつか映像化されることを願い、この4人の距離感がどう変わっていくか、を楽しみにしたいと思います。
2015年5月13日 追記