STONE さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
いつかは思い出に
原作は未読。
以前、「けいおん!」のレビューで、自分がバンド経験者だったゆえに作品の評価に対する
ハードルが低くなっているみたいなことを書きましたが、ジャズ好きでもあるので、この
作品に関しても同じような感じになってます。
基本モチーフはジャズで、更に時代は1960年代後期。まだモダンジャズが光り輝いていた
時代で、70年代になるとエレクリック・ジャズからのクロスオーヴァー、フュージョンと
いった流れになってしまうゆえに、なかなかいい題材チョイスだなと。
ジャズがモチーフと言っても、「ジャズバンドで成功するぜい!」みたいな話ではなく、
むしろジャズはスパイス的存在で、主要キャラの恋愛や友情などの人間関係に重点を置いた
青春モノ。
但し、演奏シーンの描写は非常に素晴らしいもので、これだけでも見る価値のある作品。
単に音楽や作画がいいというだけでなく、ジャズのインプロヴァイゼーションはロックや
ブルーズ等以上にプレイヤー同士の音による会話といった色合いが強く、この演奏シーンが
キャラの心情表現に役立っていた感じ。
もう一つ心情表現に役立っていたのがタイトルにもある坂。キャラ達が登下校で坂を上り
下りするシーンは、キャラの心情やキャラ同士の関係性をよく表現していたように思える。
中心となる西見 薫と川渕 千太郎はガリ勉と不良という正反対のタイプでありながら、共に
孤独だった者同士。この不器用な二人が衝突や和解を繰り返しながら友情を育んでいく過程が
見ていて非常に気持ちいい。
この二人に加えてメインヒロインの律子も含めて、いかにも60年代の地方という感じの
垢抜けていない人物タッチが、逆にリアル感を持たせてあっていい。まあ薫君は東京からの
転校生だが、本人の性格的なものでやはり洗練はされてないし。
すれ違いや勘違いなどによる鬱な展開も多く、高校時代の最後は寂しい終わり方をする。
しかし、時の流れは偉大なもので、辛いことも時間と共に思い出に変えてくれる。そして、
笑顔による再会。救われるラストで良かった。
残念だったのは、結構はしょった感が強く、そのために戸惑うことも多少あった。これは
想像だけど、1クールでやるには長い原作だったのかなと。