ペッチー さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
まさに圧巻
内容、主張ともに1期よりはるかに濃くなって神山色全開といったところ。
ただ、1期やデュアル、ディヴィジュアルエピソードはどうでもいいというわけではない。
全てを視聴することで「公安9課」に、そして9課の一人一人にしっかりとした肉付けがなされていき、それが圧巻のラストを生み出している。
ちなみに、これより後の神山作品「東のエデン」を先に見ておくこともオススメ。なにより、攻殻シリーズの直接の過去に当たるわけだし、東のエデンと少佐、クゼの関連をwikipediaで勉強しておくと、後半は号泣間違いなし。
また、神山監督の強いメッセージである、「この国の空気」(東のエデン)に対する強い批判は、攻殻にも強く流れているのだが、エデンの方がわかりやすいと思う。
1期でスタンドアローンコンプレックスという現象を発見、定義付け、2期ではそれを生み出す雰囲気のようなものを糾弾し、東のエデンに至って、それを「この国の空気」と名付け立ち向かった。そんな神山監督のメッセージの強まり方が見えてきたような気がする。
また、神山監督のメッセージとともに、押井守の攻殻に現れる少佐の孤独、そして一時はクゼとともにネットに融合しようとし、最終的に9課離脱へと繋がる複雑な感情といったものも強く表現されている。
いわば情報化社会における個と社会の関係性を、個の面から問いただす押井守と、社会の面から問いただす神山健治の両者が融合した傑作といったところだろうか。
いずれにせよ、ネットの出現によって様変わりした21世紀を生きる人間にとって必見の作品であることは間違いないだろう。
とりわけ、生来没個性的であり、独特のマスメディア文化が生み出す「空気」にだらだらと流されに流されてきた我々日本人にとっては喫緊の課題として重くのしかかってくると思う。
余談だが、神山健治がつきつけたネット市民への批判(「下部構造」と斬り捨てられた)は、現にネットにレビューをアップしているような人間には中々痛い。だから、攻殻ファンが身近にいるならなるたけ実際に会って攻殻のメッセージについての談議に花を咲かせてみるといいかも(笑)