ヒロトシ さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ひょっこりひょうたん島
この間久しぶりに見ましたが、あれ?こんなにこの作品良かったっけ?と思う程感動しました。やっぱり大人向けなんですよねこれ。高畑監督の作る作品は一見地味ですが、非常にメッセージ性が強いと感じる物が多く、昔の宮崎駿も子供でも大人でも楽しめる作品作りでメッセージ性もあったのになあと懐かしく思います。今の宮崎駿は何がしたいのか・何を伝えたいのか、私にはよく分からんですw
{netabare}自分探しの旅をテーマにした作品ですが、その旅に当時小学5年生のタエコが所々で顔を覗かせます。何故小学5年生のタエコなのか?と疑問に思う人も多いでしょうが、タエコにとってはその頃の世界が一番自分を表現できる時期だったのかもと私は思います。小学生はとにかく自分の本能だけで生きていけたのは私も経験があります。これが段々中学生になると、勉強も頑張らなきゃいけないし、部活動で上下関係を学び、となっていきます。27歳となった現在のタエ子はすっかり落ち着いた大人になっていますが、小学5年生の時は今とは正反対の性格をしています。社会生活に順応していくにつれて、何処か置き忘れていった『自分らしさ』を小学5年生にまで遡って見つけに行きたいという願望がタエ子にはあったのかもしれません。
よくある自分の田舎に帰って昔を思い出すという展開ではないのも面白いですね。普通は自分の過去に縁のある場所を訪れる事で、自分を見つめなおすという話が多いじゃないですか。タエ子は東京生まれの東京育ちなので、今回の話で行く山形に過去の自分の足跡がないわけです。しかし昔から憧れていた『田舎』のイメージを山形に重ね合わせる事で、当時の自分の思考パターンを過去から現在に引っ張り出してきています。『私は私と旅に出る』というキャッチコピーがこの作品にはついていますが、成程、自分にとって何の足跡も無い場所に行くから旅という表現を選んだのかと、確かに山形の田舎の人々はタエ子にとっては子供時代にお世話になったわけではないし、ぶっちゃけ過去をそんなに知らない人ばかりなんですよね。そんな見知らぬ土地を自身の『田舎』として愛着を抱いてはいる様に見えますが、やはりタエ子が根本的な所で抱いているイメージは『帰省』ではなく『旅』なのかもしれません。そう考えると凄くこの作品にピッタリなフレーズだと私は思います。糸井重里は天才だなあ、と改めて感じました。
子供の頃見たばっかという人は、大人になった時に改めてみると、色々懐かしく、この優しい世界に溢れ出るものを抑えきれなくなるのではと思います。そういう意味では年月をかけて2度見てほしい作品ですね。{/netabare}