manabu3 さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 2.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
自殺のエンターテイメント化
このアニメの主題は、仲間の大切さ、生き方の多様性、自殺抑止。
しかし、それだけだった。
悪く言えば自殺のエンターテイメント化。
製作者が自殺を扱った娯楽作品と考えているのなら◎
■面白いが、オススメはしたくないアニメ
{netabare}この物語では、自殺をしたことによって、主人公の人生が結果的には変わったからまだよかったと思う。
主人公は「記憶」を消されたことによって、行動が一変し、友達もでき、再び人生を歩み始めることができた。
でも、純粋な子供や、本当に追い込まれている人が、このアニメを見た場合、どうなるのだろうか。
その感じ方も「カラフル」だとは思う。だけど、怖いのは、このアニメが「自殺」を扱っている点だ。
彼らが、このアニメの主題である仲間の大切さや人生の多様性に注目するのなら問題はない。でも、仲間の大切さなどはある程度わかりきっていることではないのか。
人生に行き詰まっている人は、「どうやって」抜け出すのかが、わからないのではないだろうか。(このアニメでは「記憶を消す」ことを人生打開の「方法」として選択した)
「みんなちがって、みんないい」(私は金子みすずさんは大好きだが)、この言葉で変われる人は良いけれど、それで変われないから人は苦しむのだと思う。
「人生はカラフルだ」そう言って解決するのなら、年間3万人以上もの自殺者が出るわけないだろう。物事はそんなに単純じゃない。
だから、悩んでいる人がこのアニメを見て、自殺や自殺を試みること(リストカットなど)で、「このアニメのように」、「何かが変わる」、と思わないことを願いたい。
何故そう思うのかというと、このアニメでは、主人公が自殺をする前と後では、家族の態度、母の不倫、食事、友達の有無など、様々なことが一変し、「いい方向に変わった」からだ。
また、表紙がまるで自殺を美化しているようなキレイさだ。カラフルさがテーマなら、世界のカラフルさを表紙にすればいい。
作品のアイディアはよかったのだが、このような自殺の扱い方は私は好きになれない。生き方の多様性を訴えたいのなら、他にいくらでも方法はあるし、自殺の抑止としては微妙な作品だった。
「自殺」にかこつけたエンターテイメントだ。
私が過度な期待をしすぎたのか、得るものは少なかった。
このアニメが主張する「人生はカラフルだ」という考えには同意できるし、いつまでも主張し続ける意義はあると思う。{/netabare}
■このアニメを見て得たこと
{netabare}記憶を消すこと。
このアニメを見て、自分の行動や判断が、いかに記憶や経験によって左右されていたのかを感じた。
偏見とか、先入観とか、固定観念とか、恐怖記憶とか。それが無意味だとは思わないけども。
記憶をなくした主人公の行動は、すごく大胆で、イキイキとしていた。今までの記憶を忘れ、無心で行動することも、時には必要なのだと思った。このレビューのように。{/netabare}
■おわりに
エンディングでブルーハーツの「青空」のカバー曲が聞けたのが予想外で、嬉しかった。
そういえば、ブルーハーツの曲「ブルースをけとばせ」に、「70年なら一瞬の夢さ」という歌詞があった。昔の曲だ。
{netabare}このアニメにも、「人生たかが60年のホームステイ」というセリフがあった。いい言葉だ。
いつの時代も人間が考えることは似たようなものだ。だからこそ、その時代、その環境に合った苦しみから抜け出す「方法」を、考え続けなくてはいけないのだと思う。{/netabare}