ヒロトシ さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
こんな時代だからこそ見て欲しい。
子供の将来の情操教育に良いかなと言いつつ、半ば自分が見たいだけの為に本作のメモリアルDVD-BOXを購入しました。隙を見つけては鑑賞していましたが、見る度に精神的に辛い場面が多いので、中々一気にとはいきませんでしたが。
何分子供向けですので、当時の時代背景の説明不足や演出がやや過剰な点は確かにありますが、煙突掃除夫の仲間達の愛と友情と成長をテーマに据えた物語はどの世代の人が見ても等しく感動を与えてくれることは間違いありません。一貫してテーマに合った作品を作った故のスタッフの意地が結果的に傑作を生み出したのだと思います。
{netabare}経済的に苦しくも家族と共に幸せに過ごしていたロミオが父の病をきっかけに身売りを行い、煙突掃除夫という過酷な職業に就き、必死に生きていく。他の方も書かれていますが、煙突掃除夫というのは、云わば『誰でも出来て、基本使い捨て』というのが当たり前の人間の尊厳を無視した、下層の仕事でした。
自身の体を知らず知らずのうちに蝕まれ、給金も安い。しかしそれでも誰かがやらなければいけない仕事。ロミオとその親友であるアルフレッドは想像を絶する境遇に時には挫けそうになりながらも、互いに励ましあい、夢を語り合います。その中でアルフレドが、ロミオにこう笑顔で話すシーンが今でも心の中に焼きついています。
『ロミオ、僕たちが作っていくんだよ、新しい時代を!』
本作品が放送された95年当時は阪神・淡路大震災を契機として経済的にも大きく打撃を受けている最中であり、日本に全く元気が無い時期でもありました。そんな折に当時の日本より遙かに貧しい時代で過酷な労働に励んでいた子供達が様々な問題を乗り越えて一致団結していく様は多くの人々に感動を与えたと思います。{/netabare}
当時私は子供だったので、その事まで、頭が回りませんでしたが、東日本大震災から2年目を迎えた今日、本作のレビューを書いていて、アルフレドの言葉が胸に突き刺さります。ロミオ達が生きた時代より遙かに豊かな生活を送っていても、何処か元気が無い日本。どんなに踏まれても、屈せず、夢を持ち、目標に向かって生き、そして新しい時代を自分達で作るという気概を、今の日本に足りないものをこの作品の登場人物は教えてくれます。
こういう時代だからこそ、見ておくべき作品だと思います。
勇気を貰えるアニメです。