てけ さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
夢の終わり
原作未読。
全8章からなる物語の7章目。約120分。
「空の境界」全章に共通する項目は、第1章のレビューをご覧ください。
→ http://www.anikore.jp/review/450724/
時系列で言うと第6章の後。
4年前に引き続き、新たな連続殺人事件が発生する……。
第1章~第6章に対する解答編になっています。
今までの殺人事件は、式の仕業だったのか? それとも別の誰かなのか?
……だとしたら、その目的は?
そして、黒桐幹也はそれをどう捉えていたのか?
今までの伏線が回収され、4年前から始まる事件の真相が明かされます。
幹也の葛藤、式の葛藤、そしてたどり着く結末。
もちろん、いつものごとく、綺麗な作画、スタイリッシュなバトル。
そして、BGM、EDテーマ「seventh heaven」のクオリティも健在です。
【7章「殺人考察(後)」の考察】
{netabare}
すべての章に繋がっているストーリー展開です。
冒頭で明かされる4年前(2章)の真相。
織は幹也を愛していました。
幹也と幸せに生きることが彼の夢。
織「お前を殺したい」
殺人という感情でしか他者と関われない織にとって、これは「愛情表現」です。
しかし、幹也を殺してしまうとその対象が消えてしまう。
「夢」を破壊することを選べなかった織は、「自らを殺す」という選択肢を選んで、車にはねられました。
これは、浮遊ではなく飛行という行動に当たります(1章)。
その事故で生死の境をさまよった両儀式。
自分にはできない「夢」を叶える可能性を持つ「式」を守るため、「織」は消滅します。
そこで、式は、織の代わりに男性人格を演じることで、織の叶えられなかった「夢」を守ろうと決意します(4章)。
同時に、式は当時の記憶を失ってしまいます。
したがって、式は、自分が殺人を犯したかどうかを覚えていません。
しかし、「忘却録音」により、式の中に記憶が残っている可能性があります(6章)。
自分は本当に殺人を犯したのか? それは殺人衝動による殺戮なのか?
もしそうだとすれば、もう幹也に許されることはなくなってしまいます(3章)。
それを確認するために、殺人鬼のところへ向かう式。
式は、殺人鬼を殺すことができませんでした。
幹也のことに触れられて、傷つけることはしましたが、殺すことはしなかった。
ここで、式は自分が「他の人間を殺したことがない」ことがないことを悟ります。
まだ、夢は壊れていなかった。
しかし、式は里緒に対して直視の魔眼を使っていることに気づき、自分の中に「殺人衝動」が眠っていることも再認識します。
式が「殺人衝動」を抑え、境界を越えず、「殺人」に走らないようにつなぎ止めている「カギ」が幹也。
それに気付いた、式と白済里緒。
白済里緒は、両儀式に対する強い愛情を持っています。
好きな人が自分と同類であることを確認したいという気持ちは分かります。
同じ趣味を持っていれば嬉しいのは当然。
幹也「橙子さん、人間が人間を殺す理由は何ですか?」
橙子「相手に抱く感情が、自己の容量を超えてしまったときだろう。恋愛であれ、憎悪であれ……」
それが極端になってしまったのが、白済里緒という人間です。
式が「殺人」に焦がれていることを知った里緒は、殺人を犯してしまうわけです。
そこを荒耶宗蓮に見られ、自らの意志で起源を覚醒し、力を得ました(5章)。
そして、最終局面、幹也が里緒に殺されたと勘違いした式。
式は、自分自身も幹也を愛していることを認めます。
織に託された「夢」がいつしか自分のものになっていました。
そして、すべてを失うのが分かっていながら……もう自分の夢が叶わないと知りながら、里緒を殺してしまいます。
ただ、幹也が「先輩を殺したら許さない」と言っていたのは、式に傷ついて欲しくなかったからなんですね。
式を認める認めないの話ではなく、好きな人を守りたい、ただその一心から出た言葉だったわけです。
だから、式が生きている、ただそれだけで良かった。
幹也「代わりに背負ってやるって約束したろ」
そうして式と織の夢は叶います……というより、すでに叶っていました。
幹也「もう何年も前から僕は君が好きだった。今も」
式「今の式は、そういうの嫌いじゃない」
すごく優しい笑顔でした。
式「私が欲しかったものはナイフでも何でもなくて、そのてのひらだったんだ」
一人称が「私」になっています。
これで「式」の物語はおしまいです。
{/netabare}