2S-305 さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
残念ながら理解できませんでした・・・。
BDにて視聴。
この作品は、独自の演出を加え、「金」という、何とも生々しいものを題材に据えた異色作です。
社会風刺や「絶対的な価値観など存在しない」等といったメッセージ性を含んだストーリーが極めて特殊なカードバトルに似たアクションを交えて展開されて行きます。
真朱やQをはじめ魅力的なキャラクターも登場します。
しかしながら、語られるストーリーにどうしても矛盾を感じてしまい没入することが出来なかった、というのが正直なところです。
物語の終盤「現在を守る」ために戦う三国、「未来を守る」ために戦う公麿という構図になるわけですが、作品中で語られているエピソードで金融街崩壊で「シンガポールをはじめとした東南アジア消失」といった事態が生じていたわけで、今を守るために一部の事象が消滅することがあるのはわかりますが、今を守らなかった場合、「すべてが消失する」という事態を主人公が全く認知していないのに驚愕してしまいました。
そもそも「今」と「未来」の選択に正しい答えなどあろうはずが無いのはあたりまえの事ですが、「今が無くなればすべてが失われる」のが明白な状況で「C」の脅威により日本が消失する事態を回避するべく現実世界でも奔走する三国の前で、日々の努力もせず、相変わらずコンビニでバイトなんぞしている主人公が「未来のために今があるんだろ!」とか言ってしまってます。全然いいこと言ってません。「可能性のない未来しかないなら今に価値なんて無い!」とか無茶苦茶なセリフです。安易に使って良いセリフではないでしょう・・・。
「今を守らなくて未来無し」と感じるのは当然なことではないでしょうか?今日という日々の積み重ねが未来に続くのではないでしょうか?積み重ねたものなしに「未来」が得られるのでしょうか?「犠牲を払ってでも守った今があるから未来に価値がある」、というのがテーマなら納得できますが、「今を守れば未来が失われる」とした時点で大きなテーマを掲げようとして迷走してしまったあげくにストーリー性すべてを失った感があり、もはや奇をてらうほかにやりようが無かったといった感じです。
「今」をとなえる三国の理念には理解できる点がありましたが、「未来」をとなえる主人公には、稚拙でエゴにまみれた感情論だけで理念が存在しているようにはとても思えません。
努力もせず、犠牲を払うこともせず、ただ「拒否」するだけできれいごとばかりの主人公・・・。三国が良いというよりは、ただひたすら主人公がひど過ぎる・・・。主人公の「Cよりひどい」というセリフ、無くなったほうがましって事ですよね、訳わかりません。
私は、何かを得るためには自らの努力であったり、何らかの対価を支払うのは当然のことだと思うのですが、その意味で「対価の支払い」としてもっとも代表的な「お金」を題材にしたこのアニメで、対価や犠牲を払うことなく、わけのわからない主人公の無双っぷりにより三国を破り(自ら降りたことになってますが)、未来を得たことになっている(?)展開は全く理解できません。
大前提としての「等価交換」の思想が存在していません。
なぜ、三国が負けたのにもかかわらず、日本は消滅しなかったのかもさっぱりわかりません。消失しないのであれば三国の努力や犠牲、戦いはとんだ茶番です。
「今努力しなくても、明るい未来が必ずやってくる」、というのがこのアニメのメッセージなのでしょうか。だとすればとんだブラックジョークです。
魅力的なキャラや面白い設定、迫力あるバトルシーンと見所も多々あるのですが、ひとえに主人公が物語の魅力・説得力を著しく減衰させていたように感じてしまいました。非常に残念です。