無毒蠍 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
王道と反王道の融合。SFラブコメの快男児ここに爆誕!!
BD-BOXを購入したので十数年ぶりに視聴しました。
ディスク枚数は本編だけで4枚と非常にコンパクトです。
画質はDVD版と比較すれば綺麗になっているのでしょうが
綺麗という感じではありません、
古い作品ではありますがもうちょいノイズを減らしたり手を加えてほしかったかな。
ブックレットにも書いてありましたが今回はセルアニメ感を残すために
あえてフィルム上のゴミなどを放置したままBD化したらしいです。
まぁ気持ちや狙いはわかりますが少々マニアックすぎますよ。
フィルム上のゴミや傷をそのままにして興奮するのはもっとコアな層だと思うし
BDを買うって事は綺麗な映像を期待してるわけで、
フィルムのゴミを期待してるわけじゃありませんからね。
と言っても作品そのものは面白いし、
画質もDVDよりは綺麗だと思うのでそこまで悲観する問題じゃないかな。
本編はノイズなどが目立ちましたが逆にOPはめっちゃ綺麗でした、
ノイズも全然目立たないし凄く綺麗です。
正直このクオリティで本編のほうもお願いしたかったね。
内容はギャグ路線のSFラブコメといった印象ですが
基本の大筋はシリアスですし意外と見応えのあるメインストーリーになっていました。
ナデシコという戦艦に寄せ集められた超一流だけどクセのある民間人たち。
アキトとユリカを筆頭に個性的なメンツでこの作品は彩られており
影の薄いキャラはいません、ジュンくんが若干薄いかな?と思わなくもないですが
影が薄い!というのがジュンくんの個性なので問題ありません。
ナデシコクルーたちの自由すぎる暮らしをギャグ路線で描写しつつも、
しっかり戦争をやり、見応えのあるバトルをみせてくれます。
救える命と救えない命、正義と悪、散っていく仲間など
ギャグ路線作品のシリアスパートにしては意外と重厚感のある展開が多々ありましたね。
こういったギャグとシリアスのメリハリがこの作品最大の長所かもしれません。
第3話でしたっけ?典型的熱血主人公タイプのガイが早々に死亡。
「早すぎる『さよなら』!」というサブタイトルに偽りなしです。
これからどんどん人気がでたであろうキャラを
早々に退場させる好き勝手っぷりには驚かされます。
それまで存在してきたアニメのセオリーをことごとく無視してるように感じました。
が、しかしベタなラブコメ展開に葛藤する主人公など
抑えておくべき王道ポイントは網羅してあって、
それらの要素が惜しみなく詰め込まれてるこの作品はまさにエンターテイメントです。
戦艦ものでありながらバトルロボットものでもあるナデシコ。
このロボット、エステバリスが結構本格的なデザインをしていてカッコいいです。
コックになりたかった主人公アキトがひょんなことからパイロットとして戦っていくわけですが
アキトをエステバリスで戦わせることにより戦争の当事者にして、
うまいこと主人公として葛藤し成長していけたと思います。
ヒロインのユリカもナデシコの艦長としてアキトと一緒に成長できてたと思うし、
設定的にも面白い関係性の主人公とヒロインだったね。
主人公とヒロインとは言いますが普通のベタなラブコメよりは少々変化球気味で
アキトは最初ユリカではなく自分と似た感性を持ったメグミに好意を抱くんですよ。
結構いいところまでいったんですけど途中でアキトが戦争にとりつかれてしまってね…
中盤でメグミとは破局したんだけど、
アキトはモテますからメグミ以外の女の子からも好意をもたれてるんですな。
メグミ以外と踏み込んだ関係になることはなかったけど、
正ヒロインであるユリカを差し置いて序盤でサブとくっつけるというのは
ラブコメとして大胆な切り口だったように思えました。
ユリカは最初からアキト一筋でしたが当のアキトは知らん顔…
興味ないのかテレ隠しなのかユリカはまったく相手にされていませんでした。
最後こそ結ばれはしましたがラブコメヒロインとして
それほど目立った活躍はしませんでしたね。
最初から最後までアキトアキト言っていたので好感度はこれ以上あがりようがないし
進展も何もあったもんじゃないなとw
スバルやルリにエリナのほうが好感度の振れ幅という意味では
面白いヒロインになったかもしれない。
一般的にユリカ派とルリ派にわかれるんでしょうが僕はルリ派ですね。
ルリルリは普通に可愛いよ、ヒロイン力はそんなに高くないけど。
でも僕はどちらかと言うとスバルが好きなんですよ、
ヒロイン力は一番高かったように思えます。
これぞ典型的なラブコメツンデレキャラという印象でいいキャラでした。
でも残念ながらこういったキャラって
ヒロインではなくサブとしてしか存在させてもらえないんですよ。
スバルが一番アキトと相性がよさそうに思えたけどね。
エリナはまわりにアカツキのことが好きだと思われたり
アキトのことが好きだと思われたりしてましたがアキトのことが好きだったっぽい。
正直いつ好きになったんだよってくらいアキトを好きになったポイントがわかりません。
アキトとのイベントはいくつかありましたが、
アキトを好きになるようなイベントじゃありませんでしたし謎です。
アキトがナデシコを降りるときは「行かないで!」と号泣してましたし
ヒロイン力の上昇がとんでもなく急でした(笑)
ヒロインじゃないけどミナトさんなんかは最初のころとだいぶ印象が変わったかな。
初登場時は遊んでる雰囲気ムンムンのおねえさんでした、
現にナデシコクルーのゴートとただならぬ関係でしたし。
しかしゴートと自然消滅?してからはユリカ以上にヒロインやってましたよ。
残念ながらお相手はアキトじゃないんですが敵の軍人と恋におちてしまって
彼女のヒロイン力が急激に膨れ上がりました。
なんか初登場時は全然イメージになかった洗濯物を干してるシーンがあって、
洗濯やり慣れてるみたいな口ぶりでしたし意外と家庭的な女性であることが判明。
キャラクター的にサブキャラ以上になるわけないであろうミナトが
ヒロイン級の活躍をしだすという衝撃的展開。
本当にどこまでもセオリーを無視し続けるこの作品は展開を予想するのが困難ですね。
ギャグだシリアスだと進行しつつも伏線を回収したりと全体のつくりは丁寧に感じましたが
気になるところはもちろんあるわけで白鳥の死がすごく哀れなあつかいになってる…
白鳥はミナトと相思相愛で木星側の人間として和平を推奨してきましたが
それを快く思っていなかった木星側の人間、親友であった元一朗の手で射殺されたのです。
にも関わらず物語はそんな元一朗に何の鉄槌もくだすことなく幕を閉じます…
和平にも至らず結局は戦争も終わらず現状維持…
正直あそこで白鳥を撃ってしまった時点で
元一朗は引き下がれないところまで来ちゃったと思うんだけど現状維持で納得なの?
親友を殺すとか完全に悪堕ち展開だと思うけど
元一朗がそんな中途半端な覚悟じゃ白鳥も殺され損ですよ。
ナデシコのなかではゲキガンガーというアニメが頻繁に登場されるのですが
このゲキガンガーが作中で大きな役割を担っており大活躍です。
最初はガイと親交を深めるためだけに存在しているアニメかと思いましたが
ゲキガンガーこそ地球人、木星人、唯一の共通娯楽であり共生の第一歩だったのです。
キャラクターが悩み苦悩するたびに作中でゲキガンガーが流れ
それを観たキャラクターは勇気をもらい決断します。
ゲキガンガーの主題歌は無駄にカッコいい(笑)
ナデシコはどうやったらより視聴者を楽しませられるのか?というところに
力が入れられており遊び心満載な作品でした。
まず次回予告がやりたい放題の無法地帯。
キャラとしてじゃなく中の人、声優さんとして予告をやってたり、
違う作品の名前を堂々とだしてそのスタッフが次回に関わってるよー、
みたいな予告もあったり使えるネタは何でも使う感じの次回予告でした。
予告中もキャラが喋りまくりで画面に文字いっぱいでてくるし、
正直次回がどんな内容なのか全然頭に入ってきません。
というよりわからせる気がありません(笑)
あえて支離滅裂な予告にすることで新鮮さを提供してくれてるのかな?
総集編も普通の総集編とはちょっと違ってナデシコの世界ではゲキガンガーがアニメですが、
ゲキガンガーの世界ではナデシコがアニメという逆転ネタをつかい、
ゲキガンガーのキャラがナデシコの総集編を観てるという演出でした。
馬鹿馬鹿しいけど面白かったです、総集編は今まで観てきた人間からしてみれば
どうしてもダレる部分があると思うし
少しでもそういった気持ちを抑制できるにこしたことはないよね!
味方だろうが敵だろうがそれぞれに正義があって、
正義の戦いなんて勝手に都合よく解釈してたものの
結局やってたことはただの戦争…
敵にも正義があれば味方に悪もいる…
ここらへんのテーマは意外としっかり描かれてました。
誰だって本当は戦いたくありません、
戦争を終わらせるための戦いが敵を根絶やしにするための戦いになりつつあり、
キャラクターたちは葛藤しながらも自身の正義を信じてそれぞれの答えをだします。
ギャグ路線でありながらも根底にあるのはシリアスという、
このチグハグ感が物語にメリハリをつけ楽しませてくれました。
ラストは伏線回収など駆け足気味で終えましたが、
エンターテイメントとして良作だと思います。
【A80点】