「魔法少女まどか☆マギカ(TVアニメ動画)」

総合得点
90.9
感想・評価
10593
棚に入れた
37486
ランキング
45
ネタバレ

disaruto さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ごちゃまぜのミスリードと伏線。「魔法少女」をぶっ壊したアニメ

制作はシャフトのオリジナルアニメです。
ジャンルは魔法少女ダークファンタジーです。
大変話題になったアニメで、映画化もしています。
有名な話ですが、結構な鬱展開なので苦手な方は注意です。


見滝原中学に通っている鹿目まどかの視点から、魔法少女たちの戦いを見ていく。
魔法少女になるということはいったいどういうことなのか?


作画については異空間設定が独特で不気味な雰囲気がよく出ていました。
かわいらしいキャラデザとのギャップに心惹かれました。

音楽も非常に良し。
日常パートの軽い音楽、シリアスパートの重い音楽。
どちらも印象的です。
加えてOP、EDは物語にも大きくかかわってくる大事な要素になります。

声優陣の好演も光っています。
叫ぶ・泣く・沈むなどの感情的な場面が結構多くて難しいと思いますが、素晴らしい演技を見せてくれています。


この話の特徴はミスリードと伏線がかなり混在していること、キャラデザとストーリーのギャップだと思います。


以下詳しいネタバレと考察。私はこのアニメが大好きなので長文になってしまいました。
まずミスリードについて。
{netabare}・前半ではキュゥべえを好印象に描いている。
襲い掛かるほむらから必死で逃げている、無理矢理には話を通さないで少女たちを考えているように見えるなど。
ミスリードのためキュゥべえの演技も最初はかわいらしさを強めに出しています。

・中盤まで暁美ほむらを悪者扱いしている。
まどか・その他の魔法少女への言動、演出の仕方。
またそれに対するその他少女たちの反応。
BGMの使い方、画面の色彩効果なども働いています。
彼女の言葉は的を得ており合理的ですが、中学生の少女からすると冷徹に見えます。

・前半のカメラワーク、演出が萌えアニメチック。
キャラクターをあからさまに下から撮り上げる、クラスメイトとの恋愛話、表情の豊かさ。
日常系の場面を入れるなど、キャラクターのかわいらしさを前に出しています。
これが中盤以降のシリアス展開に効いてきます。

・巴マミを従来の魔法少女の典型として描いている。
これが一番大きいです。
変身シーン(メルヘンなBGM・SE)、ピンチに登場、困っている人を助ける、良い先輩、必殺技。
加えて強大な魔法を持っていることが二話までで示されています。
マミはあこがれの先輩としてまどか、さやかに映っている。
しかし、彼女が油断で真っ先に惨殺されることにより話が完全にシリアスにシフトします。
それを一番に表すのは初めて流されるおどろおどろしいEDです。

・OP
いわゆる詐欺OPで明るい物語だと印象付ける。
これは伏線の役目も果たしています。

とにかく前半で「この話は従来の魔法少女ものを踏襲しているんだよ?」というのをおおっぴろげに示してきます。
実際は魔法少女になることで背負う運命や魔法少女の仕組み、少女たちの苦悩について中心に描いていくシリアスなストーリーで、今までの魔法少女ものとは一線を画します。
このミスリードがはまったからこそ話題になり、伏線がのちに効いてくることになります。(3話がやはり大きいですね){/netabare}



続いて伏線について。
{netabare}・冒頭の戦闘シーン
これはタイムリープをしている伏線になっています。
一番最初に話の核を持ってくる手法です。
ここではとりあえず夢オチになっています。
勘のいい人はここでタイムリープものだと気付く可能性もあります。

・魔法少女ほむらとまどかの最初の対面シーン
この場面では絡み合った鎖がやたらに映ります。
すなわち、これは「ほむらとまどかの因果」を表します。
何度も結び付いた因果の糸により、まどかが強大な魔法力を持っていることに直結している。
また、ほむらがまどかから離れる際にあからさまに顔をゆがめます。
このような露骨に顔に出るシーンは、以降ありません。
ほむらの上手くいかないことへの苦しみ、まどかへの思いが一話時点で強く表れています。
 
・魔法少女についての説明不足
キュゥべえは正しいことを言っています。一つ願いをかなえて魔女と戦う。
しかし、ソウルジェムって何なの?
なぜグリーフシードが必要なの?
にごりきると最悪どうなるの?
誰でも思いそうな疑問には触れていません。
これらは次回への引きに有効に使われています。

・「魔法少女」の名称
いずれ魔女になるんだから魔法少女でいいじゃんというものです。
単純ですが、初めて知ったときは唖然としました。

・OP
これが一番大きいです。
このために第10話があったと言っても過言じゃないです。
この歌詞が表すのは「暁美ほむらの物語」です。
映像にまどかのシーンが多いのもミスリードに有効に働いています。
OP詐欺のミスリードだと完全に思っていたところをもう一回ひっくり返してきます。
この曲が10話EDで流れ、真の意味を知ったときは震えが止まりませんでした。
事実上、「魔法少女ほむら☆マギカ」ですよ。

冒頭から暁美ほむらの言動がおかしいのでこちらにばかり目が行ってしまいますが、よく見るといろいろな場所に伏線が張られています。{/netabare}



考察は「魂」について。
{netabare}人間は心身二元論のもとで文明を発達させていった。
それなのに「魂」と「体」を二つに分けただけで大騒ぎしすぎだとキュゥべえは言います。
一理ありますが、実際問題となると話が違う。
「心ここに非ず」という言葉がありますね。
魂が体から抜けて空っぽになり、生気を失った状態を指します。
つまり「魂」が体の中からなくなったら、それだけで生きている心地がしなくなるということもいえます。
人情から考えると、こんな状態になったら誰だってうろたえるはずです。
ましてや本作でも言及されている通り、多感な思春期の女の子が魔法少女になっているので、それは顕著に表れます。
美樹さやかの崩壊の始まりは、まさしくここにあります。
自分の体を「ゾンビ」と形容し、「抱きしめてもらえない、キスしてももらえない体」と言及していました。{/netabare}




総括して、予想を裏切る展開、きれいな伏線、綿密な世界観設定など、話題になるだけの出来はやはりあったと思います。
食わず嫌いしている方は3話まで見て判断していただきたい。
小さな子供と一緒に見てはいけませんよw

投稿 : 2014/06/16
閲覧 : 534
サンキュー:

84

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