maruo さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
不揃いで形のないもの、でも確かにそこにある A
原作未読
本作の世界で普及しているパソコン(人型情報端末)が、なぜ女性の形をしてなければならないのかとか、少し不思議な点もありますが、とりあえずそうした疑問はそっちに置いておいて見るのが良いと思います。
浪人生活のために上京した主人公・本須和秀樹と、その秀樹に拾われたパソコンの「ちぃ」。世間知らず(でも少しエッチ)で人が良いことだけしか特徴がないような秀樹に対して、「ちぃ」は最初は「ちぃ」としゃべること以外なにもできないパソコンです。それに暖かい周囲の人々(パソコン)が加わって、この物語が展開していきます。
前半はコミカルな内容が多いです。十代の男子にはありがちなプチエロ要素が良く出てきており、健康な男子だったら思わず「ぷぷぷっ」と吹き出しながら主人公に共感することが多いと思います。かといって主人公が特別なスケベという訳ではありません。全く健全な男子だからこそ多くの人のツボにもハマリそうな気がするのです。
ちぃちゃんは非常に可愛らしいです。言ってしまえば単なる機械なのですが、人形やぬいぐるみに対して可愛いと思うことががあると考えれば、機械(ましてや女性の形をした)にそう思っても何ら不思議はないです。それに加えて、ちぃちゃんはいろいろなことを学習していき、それが無邪気な子供を思わせるので、余計可愛いと思わせてくれます。
後半にかけては、一転してシリアスな内容が増えていきます。と同時に、ただ単に可愛いという感情だけにとどまらず、この作品のテーマが徐々に顔を出してきます。
そのテーマとは「愛」と言って差し支えないと思います。元々非常に多義的で複雑な概念であるため、ただ「愛」と言ってみても、それは何も言わないに等しいでしょう。ただ、この作品を見ていると、小難しい愛の定義づけの話などどうでも良く思えてきます。定義という鋳型に流し込んで整形されるのが愛なのではなく、不揃いで、未完成で、不完全で、形なんてない諸々が、それぞれ愛と呼ばれる資格を兼ね備えているのではないかと思うのです。
本作ではもう一つの問題があります。それは、人とパソコンの間に愛が成り立つのかどうかということです。しかしこればかりは、現在の我々の常識(パソコンという人型端末がない状況)で推し量るのは困難です。その困難を押して考えてみても、人によって出て来る答えはバラバラだと思いますし、肯定する人は必ずしも多くないと推測します。この作品ではどちらが多数派として描かれているのか、それは敢えて書きません。
貴方はどう考えるでしょうか。それは、この作品を見てから答えを導き出しても遅くないと思います。