みかみ(みみかき) さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
20年前の小学生の夢を丁寧につくりあげた佳作
「ああ、こういうはなし、自分が小学生のときだったら、絶対にものすごく好きだったろうなー」と思った。
それで、少し調べてみると原作の鏡 貴也氏が、1979年生まれということで、わたし(1980年生)とほぼ同世代だということを知り合点がいった。
この作品は、20年前の小学生(高学年)の欲望そのものだと思う。20年前、ドラゴンクエストや、ファイナルファンタジーがその名声を獲得したちょうどその頃だ。ジャンプでも『ダイの大冒険』など、メディアミックス作品が流通し、「日本的中世ファンタジー」なる世界観が大量に消費された。20年前の「日本的中世ファンタジー」は、それなりに多様で、それなりに豊かなひろがりをもっていた。
だが、そうした、日本的な中世ファンタジーへの欲望というのは、90年代中盤あたりから、ゆっくりと衰退をたどっていて、象徴的なのは、『FFVII』の世界観の原型となるものが、日本的中世ファンタジーではなく、『AKIRA』と『エヴァ』といったSFファンタジーになっていったことだろうと思う。
日本的中世ファンタジーは、『テイルズ』シリーズなどに受け継がれつつも、特定のオタククラスターの趣味となっていった感があった。今でいえば、麻枝准的なもの好きそうなクラスターが、日本的中世ファンタジーを占有してしまった感がある。わたしは、正直『テイルズ』的なノリとかは苦手でついていけず、その時点で、こうした世界観からはフェイドアウトしてしまった。
*
…だが、本作は、『テイルズ』的なセンスではない、20年前の、もう少し多くの読者層に開かれていて、ある程度まともに受容しうる、日本的中世ファンタジーの世界観をうまく生き残らせている。FFでいえば『FFVI』ぐらい。タクティクスほどまでハードにはいかないけれども、ドラクエでいえば久美沙織『小説版 ドラゴンクエスト』程度の欲望の保たれ方。そのぐらいのところを、すごく綺麗に生き残しているという感じがする。
こういう、生き残らせ方をしようという欲望をもっているのは、やはり1979年生まれの原作者、ならではなんだろう。同世代感が半端ない。