みかみ(みみかき) さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
オタクだけが楽しめる徹底したMAD的アニメ――もはやこれはニコ動。
はじめから、ぜんぶパロディしかありません、ということを堂々と歌い上げる、たいへん威勢のよい話。
作品そのものが、そもそもパロディとして存在していることを作品内で宣言するといえば、『ハルヒ』が思い浮かぶが、本作は『ハルヒ』よりもさらにラディカルに、すべてがパロディでしかない、ということを強く押し出したつくりになっている。
『ハルヒ』は、パロディ性を前面に押し出しつつも、文化祭描写の立ち方やら、設定の面白さやら、日常描写へのこだわりなどが高度なものがあった。…だが、「これはゾンビですか」には、そうしたものすらない。一応、シリアスなストーリーですら、どこかで見たようなはなしを、適当にはちゃめちゃにサンプリングしたような内容で、終始一貫して、冗談のようなつくりになっている。
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この「終始一貫して冗談」という点で、ギャグの部分はさておき、シリアスな部分についてまで徹底しているというのは、やはり面白い。
シリアスな展開までもが、「いかにも何かを適当に借りてきたような展開」でしかないということが、徹底している。
これは、作りが「粗い」という感触をうけた人が多いようだが、わたしは、そういう感触は受けなかった。
どう感じたかというと、上品に言えば、
「コラージュ系の前衛アート作品を見せられたときに感じるような、なにか」で、
ごく卑近な例でいえば
「ニコ動のMAD動画を見たときに感じるようななにか」
に近い。
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なお、MAD動画をみるうえで重要なことはおそらく二つあって
1.視聴者が、「ネタ元」を理解できること
2.これは、MAD動画である、ということを了解しながら、MADを見ること
の二つだろう。
このツクり方のセンスを楽しめるとしたら、それは「ネタもと」との間の距離感のわかり、かつニコ厨的な感覚のある人間…すなわちオタクしかいないのではないか、と思う。とりあえず、全編なにかのMADだと思って見てみたらけっこう楽しい。
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こういうタイプのリテラシーのあるオタクを狙い撃ちした作品が、それなりにマーケット的になりたってしまうというのはすごいことだろう。
ある意味で、非常に前衛的な作品。これだけ、MAD的なはちゃめちゃさを持ちつつも、きちんとマーケットに受け入れられるものを作れるセンスというのは、正直、ものすごい高度な謎技能だと思う。