みかみ(みみかき) さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
老人とインターネット
「無縁社会」を捉えなおす、すぐれた想像力を与えてくれる作品。
インターネット等の情報社会をめぐる想像力は基本的には20代~40代ぐらいの若い世代を中心に、まとめあげられている。そのため、「老人」がインターネットにおける一大勢力となったとき、インターネットの風景や、社会のあり方がどのように変わるのか、ということの想像力は我々にはいま、まだ現実のもの、としては迫ってこない。だから、我々は、「老人が多数を占めるインターネットの風景」について、ほとんどまともなイメージをもてていない。
しかし、本作は「老人」――とりわけ、孤独死などが多い老人たち――がインターネットに接続され、情報社会のプレイヤーとしておおきな役割を担うようになったとき、何が起こりうるのか。その風景を、真正面から描こうと試みており、素直にすばらしいSFであると思う。
こうした老人と、情報社会の未来の関わりを描く作品はほんとうに貴重だし、この未来の風景は、そう遠くない、重要な未来のはずだ。
*
しかし、ここのところ、整骨院に通院しているのだけれども、整骨院がご近所の老人コミュニティと化していて、何だか、すごいものを見たな、という気分になっている。
わたしは、ぜんぜん会話にはいっていけていない。どうして、あれほどに自然に老人コミュニティが形成されているのか、なんだか結構、不思議な気分にもなる。そして、現在の老人たちは、インターネットに接続されている人は少数派で、ネットの話でもしようものなら、未だに「よくわけのわからないことを話している若い人」扱いしかうけない。
彼/彼女らは、iPhoneの存在をまともに認識しておらず、「どうして町の真ん中に、電話屋ばっかりがあんなに、幅をとっているのだか。まったく」というような会話をなさっていて、たいへん新鮮でありました。
いまの老人たちは、本当にインターネットと無縁なんだな、としみじみ思う。
では、老人は一体いつからインターネットと深くかかわりはじめるのか。
2011年現在ではやはり、集合的な現象として立ち現れるほどの何かにはなっていない。だけれども、おそらく、いまの40代ぐらい(だいたい1960年生まれぐらいの第一世代オタク)が65歳を超える高齢者になる、2025年ぐらいから。老人とインターネットの話というのはかなり盛り上がってくるのではないだろうか。
あと、15年ぐらいしたところで、改めて本作を見るとたぶん、面白いだろう。