ツキ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
輪廻の行く先
※本作のような考察系に含まれる作品を語るには私ではまだまだ役不足なため、作品の内容に関しては他の方のレビューを参考にして頂いた方が絶対良いです。なのでここでは私なりの感想をつらつらっと書いていきます♪…
個人的に非常に評価の高いシュタゲを抑え、2011年度最高傑作と名高い本作。2012年秋に公開された映画の特典フィルムは一部が100万を超える値段でオークション落札されるなどその人気はまだまだ健在。
本作を語る上で欠かせないのは、月並みではありますがやはり<ギャップ>ですよね。
鬱系バッチコイの虚淵 玄さんの脚本に、ひだまりスケッチ等のゆる~いデザインで知られる蒼樹うめさんのキャラデザが融合され通称「血だまりスケッチ」が完成されますw そこからさらに独特の演出などで知られるシャフトが加わることでまさに異色一色の仕上がり。特にシャフトは大して難しくもないストーリーを一見難解っぽく作るのが大好きなんで、本作のような考察系を手掛けさせたらもうしっちゃかめっちゃかですねw
まぁそんなこんなで放送前から多少の話題を作りつつも、やはり本性を現したのは三話でマミさんがマミって以降。
この展開でよりこの世界観に引き込まれたのですが、私自身はそれ以前に大きく魅せられちゃってる部分がありました。
それが魔女の世界。あのなんとも言えぬ不思議で不気味な雰囲気には大きく引き込まれました。例えは悪いかもしれませんが統合失調症の方はこのような雰囲気の絵を書きますよね。主観で見ると子供の頃に高熱を出した時なんかに見る悪夢がこういった雰囲気を持っていました。
子供の頃に見た悪夢って何故かいまだに覚えてるんですが、これも一種のトラウマなのかもしれませんね。そういうものを瞬時に連想させるあの世界観・表現力って凄いです。よく分かりませんがこういうのを描ける人が天才なんだろうなぁなんて漠然と考えました。
そしてその後も加速度的にその世界観を広げるまどマギワールド。黒そうで黒くなくて、でもやっぱり真っ黒だったキュウべぇはじめ、魔法少女の存在意義やその末路、はては宇宙にまで話が及ぶ予想通り(?)のしっちゃかめっちゃか具合。この辺りで私は完全に思考を停止し、雰囲気で楽しむことに没頭しはじめますw
オリアニのため誰も先の分からない展開も相まって、当時2chのまどマギ本スレでは数十分で1スレ消化するなどその話題性はうなぎ登り。私自身一週間が楽しみでしょうがありませんでした。
ですがこの作品、リアルタイムか放送終了後の一気見かの違いで確実に楽しめ方は違うでしょう。同じ人が観てもこの違いによって作品に対する評価は恐らく変わっていたはずです。
リアルタイムの視聴について。これは面白い作品全てに言えることですが、単純に一週間が待ち遠しいですよね。特に考察が好きな人はこの間に頭の中を整理したりネットで様々な意見を見聞きしたりでよりこの一週間を楽しめるはずです。
この、待ってる間すら楽しむっていうのはリアルタイムならでは。どんなに考察が好きな人であってもいっぺんに見れる環境があるならわざわざ一週間ずつ見るってことはそうしないでしょうし、まどマギをあえて待って視聴するのは不可能かとも思いますw それだけ先の気になる展開の連続です。
仮に一週間ずつに分けて視聴したとしても、やはりリアルタイムの雰囲気は味わうことは出来ません。
これがただ面白いだけじゃないまどマギ特有の、まどマギだけに起こり得た現象です。
その理由。それは確約された最終話が必ず待っているということにあると私は考えました。
どういうことか。これは2011年3月11日に発生した東日本大震災に他なりません。
ここではあくまでもまどマギと震災の関係だけについて語らせて頂きますが、この震災の影響により最終話を前に放送は延期となります。まずこれがイレギュラー過ぎます。番組編成等によって一週間繰り越しなどは間々ありますが、突然の無期休止というのは普通あり得ません。しかも最終話直前。さらにはその内容が世界の終焉を仄めかす内容とくればこのタイミングで放送するにはあまりにも負のイメージが強すぎます。実際この年の自粛ムードはちょっと異常でしたもんね。それとJCのCM。自粛ムードに関しては後に問題にもなってましたね。
そうなってくると次にファンの間で懸念され始めたのがまどマギの〈放送中止〉でした。正直私もこれに関してはやむなしと考えました。内容が不謹慎と言えば失礼ですが、やはりタイミングが悪すぎます。アニメなんか一部の人間しか見ないんだから世間的な批判がどうこうとかいう問題ではなく、製作サイドのあくまで道徳的な問題として放送に踏み切るかどうかは非常に悩ましい問題なのではないかと思いました。仮にこの放送に対して問題提起が行われたら明確な言い訳は私には思い浮かびません。完全にバーストです。
そしてこの放送があるかないかの不安定な状態は視聴者の期待と不安を最高に煽る形として残ったと私は感じました。
結果はご存知の通り最終話の放送は行われます。放送再開まで一カ月、この一カ月って期間がまた抜群のタイミングでした。これが年単位なら諦めるかもしくは忘れ去り、数ヶ月という単位なら単純に熱が冷めます。私の場合咲・阿知賀編がこれに該当し、放送終了後はネット配信早く見てぇ~とうずいたものですが割とすぐにボルテージは下がっていきました。
逆にヱヴァ新劇なんかは年単位のスパンですがこれは視聴者側も了承しきっていますし、なによりも例に挙げた両作品は放送されるのが確定事項です。人気絶頂のまま放送休止、さらには未完の可能性をはらみつつも最終話を迎えた本作とは安定感が違います。
正直これまでの展開を考えると最終話の内容は今いちパッとしない印象でしたが、これらの普通では有り得ない事象の連続が内容以前に最終話放送の時点で視聴者にある程度の充足感と安堵を与え、本来の作品以上の評価を生み出したように感じます。非常に皮肉ではありますがこの震災はまどマギにとって全く予想外で且つ絶大な宣伝効果を生み現在の評価に繋がったのだと私は強く感じました。
こういった宣伝目的がないにも関わらず結果として絶大な宣伝効果を得た過去の事例として、私は浅間山荘事件×日清食品のカップヌードルの関係を思い浮かべました。
今では国内累計200億食を越える大人気商品のカップヌードルですが、発売からしばらくは売れ行きが芳しくなかったようです。
その現状を打ち壊したのが浅間山荘事件。私が生まれるずっと前の事件なのですが、1972年2月、連合赤軍による立てこもり事件が発生。これにより現場にはテレビカメラも入りNHKでは連続放送10時間以上、視聴率60%を越えるなど文字通り国民が固唾を飲んで見守る歴史的事件が発生しました。
その現場において隊員達が2月の平均気温-15度前後という寒空のもと、日清から配給されたカップヌードルを美味しそうに食べる映像が放送されたのが話題を呼び込み爆発的な人気を獲得した事実があるようです。
実際美味しいですもんね、カップヌードル。書いててなんか食べたくなりましたw ちなみにカップヌードルの残ったスープに卵を入れてレンジでチンすると茶碗蒸しが出来上がります。貧乏っちぃですがこれがまた美味い!w
このような、もし浅間山荘事件が発生していなかった場合の商品の売り上げ、もし震災の影響を受けなかった場合のまどマギの人気、この二つは非常に酷似した部分が大きく、また、偶然なのか必然なのか人気を得るものには運の要素も大きく関わりそれは人を動かすには十分すぎる力を持っています。
放送休止を受け待たされた結果、視聴者の作品に対する期待度は本作のクオリティ以上の評価をもたらしました。これらの要素が重なり合い人気が独り歩きしたという意味ではこれもある種の“スタンドアローン”といえるのかもしれません(すいません今攻殻視聴中なのでスタンドアローンって無理矢理でも使いたかったんですw)。