ヒロトシ さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人生の転換期に見て欲しい作品
原作をプレイした時は学生でした。アニメ化された時は社会人なりたてでした。学生の時は朋也の社会生活における辛さとか芳野の挫折の意味が、実感として湧き上がってきませんでしたが、アニメを観た時に鳥肌が立つほど、登場人物の感情がダイレクトに流れ込んできて、自分がさも体験したかのような感覚に陥りました。そして三度目は自分に子供が出来た時に見直しまして、朋也の父親としてのクズっぷりを改めて実感しながらも、愛する人を亡くした辛さというのは、その人自身にしか分からず、だからこそ誰も朋也を責めなかったのかなという考えに至りました。クラナドの登場人物は個性こそ強いですが、嫌な性格の人間は1人もいなかったので(サブキャラとかモブキャラは別として)、優しい世界故に朋也は渚と出会い、立ち直れたのかもしれないのですが、反面、厳しい場面ではその優しい世界に朋也自身甘えたままになってしまい、中々汐との関係を修復できなかったのかなと思いました。
人生と呼ばれてバカにされる事もありますが、私の場合、丁度人生の転換期にこの作品に出会ってしまった為、必要以上に作品に共感してしまった所があります。元々京アニさんの制作は原作に忠実なので、しょうがない所はありますが、良くも悪くも現実社会に迫る姿勢が強いので、私の中にアニメとしてはどうなんだろう?という思いは少しはあります。ほとんどの人間が経験するであろう出来事を架空の枠で表現してしまうというのは、現実重視の人には反対されて当然ですし、逆のパターンの場合は現実をわざわざアニメで見せるなと思う人もいるかもしれません。只昨今のアニメは多様化の一途を辿っており、こういうアニメが出てきて、一定の成功を修めたと言う事実は今の視聴者のニーズを掴んでいるとも思います。そう考えると悪い事でもないと思うんですよね。こういうアニメが出てくる事は。
ちょっと話がズレましたが、優しい人間しかいない優しい世界でのおはなしらしく、結末も非常に都合のいい、朋也にとって優しい最終回となりました。しかしせめて架空の物語くらいハッピーエンドを見たかったですし、父親が実現できなかった幸せを朋也まで背負い込んでいいという道理はありません。渚と出会って、初めて生きる事の喜びを知った朋也へのご褒美は決して奇跡なんかではなかったと、そう思います。