ヒロトシ さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
短編集は名作集とはその通り
この作品2巻あるのですが、私実は1巻しか見ていません。
ですので★による評価はしませんが、感想は書きたいなあと。
1巻目も3つのオムニバス形式のストーリーなんですが、その中で私が一番大好きな作品で青山作品の最高傑作とも思っている『ちょっとまってて』に絞ってレビューを書きたいと思います。
概要を書くと、年上の彼女麻巳子に年齢のコンプレックスを持っていた天才高校生・豊が、それを解消するために、タイムマシンを発明。しかし決行という時になって、豊の真意を察知した麻巳子がタイムマシンを勝手に使用。『ちょっとまってて』と言い残し、豊の目の前から消えてしまいます。翌日豊が学校に登校すると、周りの奇妙な変化に気付きます。麻巳子の事を皆が忘れてしまっているのです。これがタイムマシンの影響だと考えた豊は自分もどんどん麻巳子の事を忘れてしまっていってる事に気付き、自分だけは忘れないと様々な対策を施しますが、努力も空しく、豊は段々と麻巳子の事を忘れていく―という話の筋です。
麻巳子は豊との交際についてあんまり気にしてはいませんでしたが、豊の方は違っていて、年下でおまけに背丈も彼女より低い。そして自分が天才高校生という事で世間から良い意味でも悪い意味でも注目されてしまっている現状を踏まえた上で、今のままでは麻巳子に釣り合わないという事を考えていました。その対策として、過去に飛ぶ事で、自分と麻巳子を同級生にしてしまおうと考え付くわけです。しかしその為には機械を背負った上で、屋上から飛び立つという行動をしなければならない。躊躇してしまった豊の隙を突いて、麻巳子は機械を背負い、屋上から飛び立ちます。振り向き様に豊に何か言葉を残した上で―。余談ですが、この時に麻巳子が何と言っているか分からないようになっています。口パク状態です。ただタイトルが『ちょっとまってて』なので、恐らく彼女は去り際にそう言ったのだろうと視聴者に想像させる演出が見所だったりしますね。
この作品の肝は、最初は麻巳子が待つ側の人間になっているのが(今は年下で人生経験も浅い豊がいずれ成長して麻巳子に相応しい男になるという展開から)途中から完全に逆転している事ですね。麻巳子が一足先に2年後に飛び立った事から、結局待つ側になってしまったのは豊でした。そして豊は待つ側に出来る事として、必死に麻巳子を忘れまいとします。しかし結局豊も時が経つに連れて、麻巳子の事を忘れてしまいます。ここで豊の待ち姿勢は一旦保留。次に待つ側になるのが、豊の後輩になる友里で、豊に想いを寄せている彼女はあの手この手で豊の気を惹こうとします。が、終盤で麻巳子と再会した事で、友里の想いは成就しない事に。麻巳子は友里を気遣ってか、ごめんと言い、泣きながらも、最後はそれを笑顔で受けた有里も次へ歩き出します。待ったことで成就した想いと待ったけど成就しなかった想い。それぞれ違う結末を同時に描いているのは、見事としか言いようがありません。
待つ立場が作品の展開によって変わるケースは珍しいわけではないですが、待つということ自体をテーマに据え、それを二転三転させた所が、この作品の良い所かなと思います。最後麻巳子が豊に『ちゃんとまっててくれた?』『何いってんのよ。もう先輩じゃないでしょ?』で、二人の関係性の発展を示し、そこで締めるラストもテーマに沿っていて清清しいです。この作品の待つという関係も後の『名探偵コナン』の工藤新一と毛利蘭にしっかりと受け継がれてはいますね。そういう意味では由緒正しいコナンのベースの作品だと思います。まあ作者一緒なのに由緒もクソもないんですが。
短編集が名作集とはONE PIECEの尾田先生の言葉ですが、私もそう思いますね。短編は長編に比べて話を作るのが格段に難しいと思います。星新一作品なんか読むと、短編の素晴らしさ難しさは実感として湧き上がってきますよね。余談ですがEDはまだ声優になって日が浅いと思われる田村ゆかりさんが歌っておられます。歌声が結構初々しくてちょっとノスタルジックな雰囲気に浸れますよ。