ヒロトシ さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 2.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
そして少女は高い空から落ちてきた―
私的考察が大部分を占めるレビューです。昔気の向くままに書いたものなので、文としての構成は滅茶苦茶かもしれません。
灰羽とは人ではなく、また自分達が何者であるかも知らない、または知る人もいないという存在。何ゆえ生まれ、そして外界と隔絶された町で生きることを余儀なくされた存在。やがてはこの町から、またはこの世界からひっそりと消えていく存在。
ラッカ初登場時のシーンはただただ空中から落下していくというしょっぱなからずいぶん穏やかではない光景。このシーンが後々重要な意味合いを持ってくるし、キーワードとなる鳥が出てくるのもこの場面。そしてラッカの羽が出てくるシーン、レキがそんな彼女の面倒を見るシーン。どれも秀逸。レキのこの時の感情は果たしてどのようなものだったか?これは後にヒントみたいなのがあるが、そういった部分も含めて、第1話というのは非常に重要な話といえる。最終回を見た後に第1話から見返すとまた視点が自分の中で変化してきており、面白い。
自分が灰羽であることに戸惑いながらも、段々この町に馴染んでいくラッカ。レキはもちろん、クウ、ヒカリ、カナ、ネムなどもラッカを助け、そしてラッカが一人前になっていく手助けをしていく。そんな感じの話が概ねシリーズ前半の話でまとまっており、同時に灰羽が町で人間達とどのように接しているのかが、分かり易く描かれている。
そしてターニングポイントはクウの巣立ちで唐突に訪れる。
展開はガラリと変わり。灰羽ではなく、灰羽という存在の中での運命をラッカが体験した初めての出来事と言える。
巣立ちということが何ゆえ必要なのか?それが意味するのは灰羽という存在は所詮未完成な存在でしかないのか?何故クウが選ばれたのだろうか?初めて視聴者はここで『灰羽』の存在意義に疑問を投じる。当たり前に思いつつあった灰羽に抱いていた『不思議』の3文字がここで再び頭に浮かんでくる。クウのエピソードは灰羽への視点をガラリと変えてしまう。
ここから罪憑きという単語がラッカとレキを中心として作品のテーマに躍り出てくる。ここで疑問として立ち上がってくるのが罪憑きとなる灰羽の条件。灰羽となる条件を推測しつつ、そして罪憑きについて見ていく。
■灰羽になる条件
子供の外見をしている灰羽達は生まれてくることを許されなかった存在。生きることへの目的を見出せない、というか認知すらしていない場合。ラッカのような年長組は生きることの目的を失ったまま(ある程度生きる目的を認知できる年で)、死を迎えた存在。はっきりとした自我があるかないか、ここで灰羽としての姿が若干変わってくるのではないか?
■罪憑きになる条件
夢の中でも生きることへの目的を失い続けているもの。はっきりとしたことが思い出せない個体の事か?
■灰羽が暮らす町
それを探し続ける。かつて自分と同じだった存在(人間)または現在同質の存在(灰羽という同士)か?
■巣立ちの条件
それが見つかった瞬間。あるいは悟ったとき
灰羽ではなくなる(灰羽=自分の落し物を探しつづける存在)
現実に帰るか、あるいはそのままあの世にいくのか?
総合的に考えると灰羽=生きることへの目的を掴めないまま死んだ存在への最後の褒美、時間と私的に勝手に解釈。
正直答えが無い作品で、考察ポイントも沢山ある。
灰羽の真の楽しみ方は各人の考察をぶつけて議論する事なのかもしれない。勿論幻想的な世界で幻想的な容姿の住人が精一杯生きていく美しい姿を楽しむのも、作品の魅力の1つだが。