無毒蠍 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
宇宙をさすらう自由気ままなカウボーイ!出会いと別れを繰り返し今日も彼らは獲物を狙う…
サンライズが世に送り出した名作アニメ、カウボーイビバップ。
最近ブルーレイBOXが発売されたのを機に購入し観なおしてみました。
前回視聴したのは数年前なので新鮮な気持ちで視聴できたのはよかったです。
ブルーレイということもあり画質は綺麗ではっきりくっきり鮮明に描写されてました。
この作品はハードボイルドといったらこれ!というような作品で
キザ、渋い、カッコいいキャラクターたちの活き活きとした暮らしが魅力のひとつです。
前に観たときよりも楽しめました。
むかしはそこまでハードボイルドな生き方に感銘を受けることはありませんでしたが
いま観るとやっぱかっこいいなぁw
一話目から脈絡のないシナリオで当たり前のように賞金首を狙います。
キャラクターがどういう人たちなのか?というような詳しい説明の段取りはなく、
むしろそれがビバップの魅力にもなっています。
一話の段階じゃスパイクたちがどういった人物なのか説明不足のため把握できませんが
そういったキャラの掘り下げはバランスよく話しに盛り込まれています。
それぞれのキャラがメインをつとめる回がいい塩梅で配置されてるんですよね。
そこにビバップの中枢を担うスパイク、ビシャス、ジュリアのメインストーリーっぽいのがあるわけです。
脈絡のないシナリオが続く中でそのメインストーリーが前中後とバランスよく配置してあるので
ちょうどいい感じに気が引き締まるんですよねw
目をつけた賞金首は絶対に見逃さない…どこまでもストイックなカウボーイたちです。
例えそれが昔馴染みだろうが関係ありません。
ビバップ号に最初はスパイクとジェットのみでしたが
物語が進むにつれアイン(犬)、フェイ、エドなど個性的な仲間が増えていきます。
最初は嫌々一緒に過ごしてたのに終盤では完全にチームになってるんですよ。
賞金首を捕縛するときの抜群なチームワーク!
もはや賞金稼ぎのビバップ一家と呼んだほうがいいかもしれません。
ただの骨休みのつもりがあまりにも居心地がいいもんだからそのまま住み着いてしまう…
今まで孤独に生きてきた彼らからしたらこの生活は刺激が強すぎたのかも。
あとスパイクが強すぎないところもいいね。
彼はレッドドラゴンという組織に所属していた過去がありかなりの強さですが
それはあくまで人間的な強さであってその力が度を越えるようなことはありません。
むしろスパイクを凌駕する強敵だって存在します。
一番印象に残ってるのはマッドピエロでしょう。
研究者たちに身体をいじられまくり精神を病み殺人鬼と化した男。
あらゆる実験のせいでその力は怪物的、純粋悪と呼ぶにふさわしい恐ろしさでした。
結果的にスパイクは勝利しましたが勝ちを拾ったような印象です。
悪魔を憐れむ歌といいマッドピエロといいスパイクを苦しめた敵は子供なんですよね、
悪魔は外見が子供で中身は大人、マッドピエロは外見が大人で中身は子供。
元から子供が嫌いなスパイクですがますます嫌いになっただろうなw
そういったシリアス路線のお話もあればギャグテイストのお話もあって、
闇夜のヘビィ・ロックとカウボーイファンクなんかはギャグっぽかったですね。
闇夜のヘビィ・ロックはビバップ号に謎の未確認生物が出現して次々と仲間が襲われ
最終的に一人になったスパイクが未確認生物と死闘を繰り広げるお話です。
それだけ聞くとシリアスに思えますが
そもそもの原因が一年以上前に入手したロブスターを
ずっと冷蔵庫に放置してたことが原因なんですよw
最終的にはそのパンドラの箱と呼ぶに相応しい冷蔵庫を宇宙空間に放流することで幕を閉じますが
ビバップのギャグって少し変わっていてギャグネタをシリアステイストでやったりするんですよ。
大真面目にお笑いやってみました!という感じなのです。
カウボーイファンクもギャグ路線ですがこちらはシリアステイストというわけではありません。
どちらかというとよりお笑いテイストになってはいますが
大真面目にお笑いをやっていることには変わりないと思いました。
物語の概要はスパイクと同じカウボーイのアンディという男が登場するのですが
この男が結構なアホでスパイクの神経を逆なでしてばかり…
目的の賞金首を無視しスパイクVSアンディの世紀の一戦に発展していくというものです。
この話のどこで大真面目にお笑いをやってるのかというとバトルです。
このバトルがお笑い路線ではなくちゃんと本格的にバトルしてくれてるんですよw
終盤の肉弾戦はお笑いっぽく感じますけど二人は本気で相手をぶちのめす気で戦ってますし
それがちょっと二人の息が合わなさすぎてお笑いに見えるだけなんですよね、きっと。
無駄に作画に気合が入っていてヌルヌル動くところなんかも
大真面目にお笑いをやってる証拠に思えます。
ギャグ回のくせにカッコよく見せようというスタッフの思惑が感じ取れるんですよw
それとスパイクとアンディを見ていて思ったのは
もしスパイクがジェットではなくアンディとコンビを組んでたらこうなってたのか…という事ですw
お互いのやることなすことでうまい具合に阻害しあって足を引っ張り合っています。
普段のクールなお話があるからこういったギャグ回が引き立つんでしょうね。
スパイクたちって誰か一人が勝手に行動してどっか行っちゃうとあれこれ文句言うんだけど、
いざ自分がその立場になったらやっぱり勝手にどっか行っちゃうんだよねw
ビバップ号の面々は自由気ままと言えば聞こえはいいですが身勝手な連中の集まりなのです。
輪からはみでた連中が集まりよろしくやってる、そんな感じのチームですね。
物語の傾向は様々でしっとり感動系もあれば男のロマン系もあるし渋い系もある、
笑い系もあればホラーもある。
自由気ままなカウボーイたちに降りかかる数々の災難が
様々なジャンルを通して描写されてるのです。
スパイクもジェットもフェイも程度の差はあれ過去にとらわれてる面があり、
そういった彼らの過去が徐々に紐解かれていくのが面白かったりするんです。
彼らのことを知っていく楽しみがあります。
そういう意味では一番の謎はエドなのかもしれないね。
どこから来てどこへ行くのか…エドは謎だらけです。
終盤ではビバップ号の持ち主であるジェット以外が勝手に行動し、
ビバップ号から姿を消します。
フェイだけは帰ってきますがエドは父親と一緒に行くことを選んだみたい…
彼女に懐いていたアインも一緒に行ってしまいます。
そしてスパイクもビシャスと決着をつけるために死地へ赴くのです。
スパイクを止めようとするフェイの姿が悲しいシーンでした、
彼女は失っていた記憶を思い出したことにより少し変化したのか
普段見せることのない涙をフェイは見せてたね。
スパイクの身を案じるフェイにお淑やかだった50年前の姿が垣間見えた瞬間でした。
エドは戻ってこないままカウボーイビバップという作品は幕を閉じますが
もしかしたら後に戻ってきた可能性だってあるんだよね。
気ままな彼女のことですしそのうち、ね。
ビシャスとの死闘に勝利したスパイクでしたが彼もまた力尽きてしまいます…
そしてそのままエンディング。
普通に考えたら死んでしまったようにしか見えないシーンでしたが
後に助かった可能性もあるよね。
今まで何度も死にそして生き返った男です…ひょっとしたら今回だって…
願わくばこの身勝手なカウボーイたちの生活をずっと見ていたいと思えるような作品でした。
作中でも言われてましたが「夢」だったのかもしれません。
こんな夢ならさめないでいたいものです…
ちなみに初回限定版にのみオーディオコメンタリーが収録されてるのですが面白かったです。
山寺さんは意外にもビバップが初オーディオコメンタリーだったらしくノリノリでしたね。
2004年のDVD-BOXに収録されたコメンタリーに加え、
今回2012年Blu-rayBOX用に新規コメンタリーを収録してあります。
ジェット役の石塚運昇さんは2004年のコメンタリーでも内容をあまり憶えてませんでしたが
2012年版でも全然憶えてないですw
そのくせジェットがメインだった第10話ガニメデ慕情だけは繰り返し観たらしいw
オーディオコメンタリーの1シーンですがこんな出来事がありました。
石塚「そうそう、なんか言ってたねぇ、ある子供が…小学校にもいってない子供が山寺のこれ観て」
山寺「はい」
石塚「ビバップ観てんだって。ほんで山寺のことを山ちゃんはやっぱり演技力がすごいね」
山寺「未就学児童が(笑)」
石塚「んで俺は?つったら味があるねって言われたよ(笑)」
山寺&多田「すごいw」
林原「その子は大物だねぇ」
山寺「たぶんおっはーとかでね、観てくれてるけどこれ観て演技力のことを。」
林原「だって別人だもんね!」
山寺「いまだにこれを超えられなくて困ってるんだけどね」
林原&多田「あはははは(笑)」
林原「あはははは(爆笑)」
多田「ちょう笑ってる(笑)」
林原「おかしい(笑)」
山寺「林原さんウケすぎじゃないですか(笑)
心当たりがあるんですか?そういえば山寺このあとパッとしねえなぁ、みてえな」
林原「思ってないけどぉ(笑)私でもやっぱり山寺さんの色んな役の中で
この男好きだなってちょっと思いましたね、色々やってますけどね」
山寺さんの自虐ネタで林原さんが爆笑w
2012年時点でスパイク超えられてないってネタなのか本音なのか…
まぁスパイクはカッコいいもんね。
オーディオコメンタリーとかあってもほとんど聴かないタイプなんですが
ビバップは楽しく視聴させてもらいました。
個人的に10年、15年と間をあけて当時のこぼれ話なんかをしてくれたほうが楽しめます。
そんな長い間、愛され続けるというだけでも難しいことなんですよねぇ。
いま観ても色褪せてる感じがしないし楽しませてもらいました。
『君の瞳に…映った僕に乾杯』
【A82点】