hiroshi5 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
これぞ超大作。好き嫌いはあれど、この作品の完成度は見過ごせない。
全74話の大作。ミステリー&サスペンスアニメ。
「人の命は平等か?」というテーマを常に提示しつつ、舞台であるドイツとチェコスロバキアを中心にチェコスロバキア秘密警察を絡めての政治工作と止まらない殺人事件の真相を描いている。
始まりはベルリンの壁崩壊前に行われていた東ドイツの人格改造実験まで遡り、その結果として生まれた一人の怪物、ヨハンとそのヨハンを追う天才外科医Dr.テンマの物語。
この作品、初めの40話は確実にアニメ史に残るであろう至高の完成度に達している。
無関係に見えた数々の殺人事件が見事に繋がることで隙間無く伏線を回収していく。テンポ、伏線の張り方、次回への持って行き方、新しいキャラを登場させ、死なせるタイミング。これらの要素が完璧なまでに洗練されている。
物語の進め方という点では同時期に放送されていた攻殻機動隊Stand Alone Complexをも凌駕するだろう。
だが、40話以降その歯車が少しずつ廻らなくなる。新キャラクターの登場のさせ方が雑になっていくのだ。
次から次にヨハンやベルリンの壁崩壊前に何が行われていたのかについて知っている人物が登場してくる。
一つの可能性や事件からヨハンという人物像を探って行く40話までの展開がここで終わる。
話が話なだけにこうなるのは仕方がないのだが、事件の全貌を知っている人物がいきなり登場してしまうと、今まで主人公が必死に調べて来た苦労はなんだったんだ?と思わずにはいられない。
いや、まぁ事件を調べたから全貌を知る人物の存在も知ることができるんだろう。だが、向こう側から接触してきた日には「何だこりゃ」と思ってしまう。
そしてこの作品がもっとも面白く無くなるのは大量の回想シーンが登場する60話以降だ。ヨハンの妹であるニナ・リーベルトの失われた記憶を取り戻そうとするのだが、ここの回想シーンが多過ぎる。しかも、ニナ役の能登さんが頑張り過ぎててニナの苦しむ場面や発狂する場面毎に私は見ていて気分が悪くなる始末。
もうちょっとマイルドにことを運べなかったのか。
他にも主人公とヨハンのライバル関係が成立しているため74話を使っても終わり方がだいたい予想できてしまう点や記憶という曖昧なものを頼りに真相を追っている部分がある為最後まで釈然としないものが残る点で終盤は面白みに欠ける。
だが、それらの悪い点全てを考慮してもおつりが来るぐらいに洗練された作品と言えよう。
74話という話数を使うとこれほどまでに複雑かつ魅力的な作品を制作できるのかと感心せずにはいられない。