CC さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ピアノの森
町はずれの「ピアノも森」で育った少年「一之瀬海」とピアニスト界のサラブレッド「雨宮修平」出会いをきっかけに成長していく物語。
物語は特に捻りのないモノだったので、万人受けする作品に思います。キャストは「上戸彩」を筆頭に「宮迫博之」「キャイーン」「高田純次」と名立たる芸能人が多数出演している。本職の声優に引けを取らない良い演技だった。
この映画を見終えて心に突き刺さった場面がありました。
それは「修平」が「海」の演奏を初めて聴いたワンシーン。
森の中にピアノがポツンと置いてあり、森に溶け込んでいるとてもシュールな光景。そんな中「修平」がそのピアノを弾いてみるが音が出ない。「修平」が「海」に演奏してと頼むと「海」は靴を脱いで演奏する。このシーンは正直鳥肌立った。「海」が演奏する瞬間、一瞬だけ間があってその間の中で小鳥が囀り、森の木々は透き通った空気を感じさせ、日光がピアノを照らす。そんな中で演奏が始まり、そこで奏でられるピアノの音はとても美しく思えた。後に「修平」ではピアノの音がでなかった理由がわかるのだけど、初見では理由なんて知らないから神秘的にも思えた。素晴らしいワンシーンでした。
コンクールの結末では、天才と秀才が勝負し天才が勝った「試合には負けたけど、勝負では勝った」みたいな綺麗な話であったが、「修平」の事を思うと一概にイイ話だったとは言えない。森のピアノは弾けないし、どんな形であれ先生に教えを請うたが断られ、名誉は手に入れたが勝負に負ける始末。努力が報われていないように思う。悲しいね。悲しいから考え方を変えてみた。
「海」は誰も弾けなかったピアノを弾けたり、聴いた曲をすぐに弾けたりと天才的ではあるようにみえるが、彼は幼少の頃から毎日毎晩ピアノで(と)遊んでいたからできた事だと思う。それが「修平」や「阿字野」との出会いがきっかけで形になったに過ぎない。「海」が森で遊んでいた時間と「修平」が英才教育を受けていた時間は大差があまりなかったのではないか、と考えることにする。
環境の違い、向き合い方の違い、方向性の違い、技術の違い。対比して見ると様々な違いがあるけれど、コンクールでは向き合い方の違いが「海」の方が大きく勝っていたからの結果だったと思う。
こういう描写はあったのだけど、「海」の才能が開花していく様が目立って見てとれ、その様を「天才だから」という言葉だけで片付けたくなかったから書きました。映画の中では「修平」は報われなかったが、コンサートで凄く成長したので、原作ではきっと輝いているだろうよ。