「MONSTERモンスター(TVアニメ動画)」

総合得点
77.6
感想・評価
636
棚に入れた
3524
ランキング
611
★★★★☆ 4.0 (636)
物語
4.3
作画
3.8
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

無毒蠍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

「善悪」とは何か?そんな答えようのない問いが作中ではいくつも見受けられた。これだけ人間関係をいじくりまわした作品も稀有だろう。

全74話で構成される長編アニメーションの傑作。
深夜枠でよく74話もやり見事に完結させたな、というのが率直な感想です。
常に先の展開が気になってしまうのがミステリー作品の強みだよね。
気がつけば1日で40話も観てしまったw
今まで1日で40話もアニメを観たことなんてありません。
全74話を2日で視聴を終えました。
そこまで奇をてらった無茶な展開もなく全体的に丁寧です。
自然な流れで話を膨らませていく構成はさすが。

物語の概要は将来を約束された若き天才医師、天馬賢三、
彼の元に双子の兄妹が運びこまれたところから全ては始まるのです。
院長の娘エヴァというフィアンセもおり順風満帆かに思われた彼の人生ですが、
双子の兄ヨハンを助けたことにより歯車が狂ってしまいます。
ヨハンはかなりの重症で助けられるのはテンマくらいでした、
しかしタイミングの悪いことに院長を支援してくれてる市長が運びこまれてきて
院長はヨハンではなく市長のほうの手術を執刀するように命じるのです。
しかしテンマは命令を無視しヨハンを救ってしまう…
彼が「怪物」だとも知らずに…

ヨハンはこの物語の核心の部分を担っており、
全編にわたって物語最大の「敵」として存在してます。
すべてを失ったテンマは自身が生き返らせてしまった「悪魔」を
今度は自らの手で殺すためにヨハンの動向を追うことになるのです。
10話くらいでヨハンの幼少のころの話しとかあって、
結構な核心の部分に近づいてるように思えたのですが
実際は全然でしたね、しょせん全74話のうちの10話でした。
ここからが長いのです。

中盤まではヨハンもほとんど登場せず謎の存在として描写されていますが、
中盤くらいからヨハンの行動を
その時ヨハンと接触していた他のキャラクターの視点から観る事ができます。

どこでどうやったかは知りませんがヨハンには多くの支援者が存在してました。
崇拝にちかいかたちで信者でしたね、ヨハンは人心掌握の術を知っています。
端正な顔立ち、やわらかい物腰、あふれんばかりの知性…
彼はどれをとっても完璧でした、
正直私は彼を「怪物」と恐れる人の気持ちをわかりますし、
「指導者」だと崇拝する人の気持ちもわかります。
ヨハンには妙な安心感をおぼえるんですよ、これがカリスマ性というやつでしょうか。

この作品はヨハンを倒すというよりはヨハンのことを知っていくというのがメイン。
最初のころは彼がなぜ無感情に人を殺してまわっているのか、
皆目検討もつきませんが物語が進むうちに徐々にそれらは紐解かれていきます。
最後のほうではヨハンが可哀想に思えてきたなぁ、
彼のしてきたことを考えれば絶対に哀れむべきじゃないんだろうけど。

今回の事件を一言で表現するならば
ヨハンが妹のアンナを大切に想うあまりに発生してしまったことにも思える。
ヨハン…彼は本当に「怪物」だったのだろうか?

主人公のテンマとは別に物語中では複数の人物をメインに据えたお話があります。
テンマ、ニナ、ルンゲ…テンマは主人公ですが他の二人も主人公クラスの登場人物です。
他にも主人公っぽい活躍をするキャラはいますが
序盤から終始物語に関わっているという意味ではこの三人になるでしょう。

テンマはヨハンが殺した殺人事件で犯人にされてしまい指名手配されます。
エリート街道まっしぐらだった彼の転落が一番最初の山場。
メスを握っていた彼の手には銃が握られヨハンを追います…
最初のほうの印象とは違ってどんどん逞しくなっていくキャラ…
と言えば聞こえはいいですがヨハンを殺すことにとらわれてしまった彼もある意味、
ヨハンと同じ「怪物」に近づいていたのかもしれません。
しかし結局テンマはヨハンを殺すことができませんでした。
彼は人です、医者なのです。
テンマにできること…それは救ってあげることだけでした。

ニナはヨハンの妹アンナです。
彼女もまたヨハンを殺すためにテンマとは別行動でヨハンを追います。
ニナはヨハンの妹ですからテンマとは違った楽しみかたができました。
彼女には忘れてしまっていますがヨハンと過ごした記憶があります、
ヨハンを追うと同時にそれらの記憶を取り戻していくのが
ニアのお話のメインになっています。

ルンゲは連邦捜査官というエリートですがテンマと関わったばかりに彼の人生も転落します。
テンマが言うヨハンを彼の妄想だと一蹴しヨハンとはテンマの別人格だと
的外れな推理を展開しテンマを追い詰めていく人物。
ヨハンとは違った意味で宿敵といえる存在かもしれません。
彼がヨハンの存在を認識したとき物語は多方面から動き始めます。
個人的にルンゲはある意味ヨハン以上に狂気じみているというか、
テンマに固執しすぎていて怖かったです。
お前がやったんだ…
お前が殺した…
ヨハンとはお前のことだろ。
そんなふうにテンマを苦しめたルンゲが
終盤でようやく自身の非を認め謝罪する姿は感慨深いものがあります。

ミステリー作品としてワクワクするのはもちろん感動します。
作中でいくつも感動できるお話があるんですよ。
テンマが旅を続ける中で多くの出会いがあり別れがありました。
孤独なテンマが人に優しくされている…それだけで泣けてきます…
どこまでいっても人は人でしかない…怪物なんかじゃないんです…
テンマのだす答えとは…

テンマはヨハンを追ううえで射撃訓練を受けました、ニナも同様です。
しかし二人とも作中で誰一人とて殺しませんでした。
自分自身では覚悟がきまってたはずなのに
お互いがお互いで罪人にならないように声を掛け合っていたのです。
「ニナ撃つな!」「テンマ撃たないで!」
僕がやるから君は撃つな…
私がやるからあなたは撃たないで…
自分の名前を呼んでくれる人がいるから二人は人を殺さずにこれたのかもしれません。

ヨハンはどうだったのかな…
自身の存在を知っているものすべてを殺してまわり、
彼が存在した事実をなくそうとしていました…
彼には名前がありません…ヨハンですらないのです…
彼に名前をつけたのは誰…
モンスターという名前をつけたのは誰…
彼をモンスターにしたのは誰…
「なまえのないかいぶつ」にしたのは……

【A82点】

投稿 : 2013/01/21
閲覧 : 315
サンキュー:

4

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