ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
魔法少女の新しい形
前半はこれから見る人向けのレビュー
後半は作品を観終わった人向けの考察となっております
もともとそこまでディープなアニメファンでもなかった私は
『魔法少女まどか☆マギカ』というタイトルと
蒼樹うめ先生のかわいらしいイラスト
この時点で自分には合いそうにないと
詳しい作品情報を調べることもなく敬遠していました
放送が中盤まで進んだころにネット上で盛り上がっていると聞き
脚本:虚淵玄ということを知りました
少し興味を持ってどんな作品なのか調べてみると
見つかったのが虚淵さんのいくつかの発言
「テレビの前の皆様が温かく幸せな気持ちで一杯になってもらえるよう、精一杯頑張ります!」(公式サイト)
「で、俺のせいで先の展開が見透かされるのは申し訳ねぇなぁ、という思いもあって、どうにか火消しというか、ミスリードできんものかとあれこれ奔走したわけだが。結局、まったく効果無かったよねぇ。」(ツイッター)
いったいどんなアニメなのかと1話から視聴開始
3話以降の息もつかせぬ展開に一気にその時点の最新話まで観てしまい
震災で一時放映中止になるまで以来毎週心待ちするようになりました
しかし、あのタイトルとキャラクターデザインで
あんな展開になるとは予想だにしませんでした
私のように食わず嫌いをしてしまうならまだいいですが
予備知識なく視聴をはじめて衝撃を受ける方もいるでしょう
深夜アニメですし大きなお友達がぎゃふんと言わされるのは
むしろ制作サイドの狙い通りなのでしょうが
これだけ大きなブームになってしまうとなると
レンタルDVD店の人気タイトル置き場にしばらくは君臨するでしょうから
何も知らないで手に取った小さなお子様に
大きなトラウマを植え付けるんじゃないかと心配です
さて、一か月ほどおあずけを食らったうえで
ようやく最終話が放映されましたが
その一月の間に作品の人気はさらにヒートアップしていき
皆がそのラストに期待と不安を募らせていきました
こういった視聴者を裏切り続けることで人気を博してきた作品は
ラストの出来栄えが作品そのものの評価を大きく左右するものです
虚淵玄脚本ということもあって
しっかり落としどころは用意してあるのだろうとは思いましたが
バッドエンドの申し子のような脚本家が
前述のように「温かく幸せな気持ち」はミスリードと公言している以上
ハッピーエンドは望めないだろうという覚悟のようなものはありました
そして提示された結末は・・・
未視聴の方はどうぞ自分の目で確認してください
~・~・~・~・~・~・~以下ネタバレあり~・~・~・~・~・~・~
ラストに関しては賛否が分かれているようですね
この終わり方を支持するかどうかは一人一人に委ねられるべきとして
これはハッピーエンドなのかどうか?という部分でも
大きく意見が分かれているような気がします
このアニメは伏線を張って回収するという手法が随所にちりばめられていますが
最後まで観てからでないとそこに伏線が仕込まれていることに気が付かなかったり
あるいはその意味が理解できない部分も多くあります
納得がいかない場合は何かを見落としていないか
もう一度見返してみるとよいかもしれません
丁寧に作られているシナリオだけに丁寧に咀嚼していかなければ
うまく飲み込めないこともあるでしょう
「どんなに大切にしてもらってるか知ってるから。自分を粗末にしちゃいけないの分かる」
「希望を信じた魔法少女を私は泣かせたくない。最後まで笑顔でいてほしい」
「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私そんなのは違うって何度でも言い返せます。きっといつまでも言い張れます」
「私の願いはすべての魔女を消し去ること。本当にそれが叶ったんだとしたら、私だってもう絶望する必要なんてない」
11話後半から12話前半にかけて、まどかは繰り返し繰り返し
この結末がまどかに考え付く最高のハッピーエンドなんだと訴え続けています
杏子:「いいんじゃねぇの?やれるもんならやってみなよ。戦う理由見つけたんだろ?逃げないって自分で決めたんだろ?なら仕方ないじゃん。あとはとことん突っ走るしかねーんだからさ」
まみ:「あなたは希望を叶えるんじゃない。あなた自身が希望になるのよ。私たちすべての希望に」
魔女になることなく散って行った二人はまどかを心配しつつも応援して送り出しています
まどか:「さやかちゃんが祈ったことも、そのために頑張ってきたことも、とっても大切で絶対無意味じゃなかったと思うの。だから・・・」
さやか:「うん、これでいいよ。そうだよ、あたしはただもう一度あいつの演奏が聴きたかっただけなんだ。あのバイオリンをもっともっと大勢の人に聞いてほしかった。それを思い出せただけで十分だよ。もう何の後悔もない。」
8話のバス停での喧嘩別れが最後の会話になっていたさやかもまどかの選択を受け入れることができたようです
「これがまどかの望んだ結末だっていうの?こんな終わり方でまどかは報われるの?冗談じゃないわ。これじゃ死ぬよりももっとひどい」
しかし残る最後の一人ほむらだけは別離の直前まで、まどかの願いに否定的な発言を続けています
そしてそのまま幕が下りるまで彼女の口からまどかの選択を肯定する発言はありません
見方によっては彼女だけが報われなかったととることもできます
しかし本当にそうでしょうか?
私はそのヒントは「コネクト」の歌詞に隠されていると考えます。
10話でこの曲がEDとして放送されるまで
明るい楽曲が本編にそぐわない。ミスリードの一環である。
というような受け止め方をされていましたが
10話のEDとして起用されたことで
これは時間遡行を繰り返してQBの魔の手からまどかを守りたいという
ほむらの悲壮感に満ちた決意の歌である
という認識が広まったように思います
しかしそれでは10話のみならず
最終話である12話のEDつまりは物語全体の締めくくりに
再びこの楽曲が使われていることの説明が付きません
12話のEDのコネクトには10話のEDのコネクトとは
別の意味が込められているのではないでしょうか?
つまりラストのコネクトはまどかが再構築した世界で
まどかとの再会を信じて戦い続けるほむらの
まどかに向けたメッセージなのでしょう
この歌には二重の意味が隠されていたわけですね
何を言っているのかわからないという人は
もう一度歌詞を読み返してみてください
そのように解釈すると
ほむらを含めすべての魔法少女がこの結末を受け入れており
これは魔法少女たちの希望に満ちた物語なのだといえるでしょう
つまりツイッターでのミスリード発言こそがミスリードであり
これは立派にハッピーエンドの一つのかたちなのだと思います