せんたー試験 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
南海キャンディーズの敗因
戦国大合戦とこのおとな帝国はクレヨンしんちゃんでは鉄板な映画ではないでしょうか。
個人的には戦国大合戦よりもメッセージ性は強いと思っています。{netabare}
この物語は個人的には戦国よりも泣きませんでした。
しかしながら、見終わってから深いテーマがあったと思いました。
印象に残っているのは二点。
一つ目は野原ひろしが幼少期の思い出に呑まれているときにしんのすけによって此方の世界に帰ってくるところです。
その時、ひろしの両親はひろしを置いて行きますが、
あれはいずれ人は世代を重ねて、過去のモノになっていく事を隠喩しているような気がします。
そして、しんのすけの存在をみとめ、自分の過去を思い出し、そして涙するシーンがありました。
あのとき彼は自分の生きてきた時間の尊さに気付いたのだと思います。辛い学生時代を経て、結婚、出産…。
彼はその時間をきっと一生懸命に生きていたのでしょう。
だからあの瞬間に涙できた。
その瞬間を懸命に生きるその意義を見つけられた。
二つ目はしんのすけが必死に東京タワーを上っていく場面です。最後にぎりぎり間に合えど、彼には「南海キャンディーズ」を止められる力は残っていなかった。
結局止めたのは、過去に戻ることを求めた人間たちの心変わりです。
しかしそれを呼び起こしたしんのすけ。
彼の、あの決死の階段アクションは実に感慨深かったです。
彼は自分の明日を、死に物狂いで求めた。
その必死さは、若者のいつかは失われる若さなのかもしれません。
それでもその力は大人を動かし明日を勝ち取った。
之は、私の勝手な思い込みになりますが、
この二つのシーンは今を生きる事を隠喩しているのではないでしょうか。
過去は過ぎ去る物ですが、今この時もリアルタイムで今が過去になっている。
その中で、過去をもとめる、過去に帰ろうとする事は果たしてどれほど意味を持つのでしょうか。
今こそが未来であり過去である、言わば砂時計の上下のつなぎ目。
どちらでもないそこに生きる私たちに求められる事。
それは、 今を生きる。
後悔も葛藤も後腐れも…すべてをおいて今を生きる。
とにかく精一杯に。
それができて初めて過去も未来も生まれるような気がします。
それこそが今の私たちであるべきです。
精神的な話ですが、つまり{/netabare}
今を精一杯生きてこそいつくしむべき過去があり、その過去
はたまにアルバムとかで振りかえってやるだけで十分。
大切なモノはすぐ手の中にあり、過去には無い。
だから
今を精一杯生きる。今を精一杯求める。
過去に戻る事は、今を捨てること、精一杯を捨てること…。
過去にしがみついて、そこに今を求めようとした時点で過去も未来もすべて否定した。
そう思うのです。
まあとにもかくにも、yesterdays ones moreはしんのすけに敗れる事になったのでした。