TY さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
この世に宇宙の一部じゃないものなんてない!You copy?
原作未読です。
随分長い間、気になりつつも手がでなかった作品。
舞台背景は現代よりもかなり宇宙開発が進んだ時代。
かといってガンダムの宇宙世紀よりはかなり手前w
いわば近未来だけれどSFというには相当に現実味を帯びた内容に
なっている。
ちょっと具体的に説明すると。
時代は2070年代で人類が宇宙開発を進め、月面基地や
宇宙ステーションが完成していて、人々は様々な産業、商業
活動を行っている。
火星にも有人で到達していて、次は木星の探査が計画されている。
といった感じ。
この作品のように宇宙をベースに産業、商業活動は行われて
いないけど、宇宙ステーションは現実に有るわけだから、もうすぐ
こんな時代が来るかも!?
そういった期待でワクワクしながら観始めた。
内容に関しては宇宙で働く人々の日常、宇宙飛行士のサクセス
ストーリーに恋愛も絡めつつといった感じ。
だけじゃなくて。
いや、むしろこっちですっ!!
この作品のすごいとこは、人類が宇宙に出たことによって起こった様々な問題を多角的な視点からリアリティを持たせて描写している
点だと思う。
人類が歴史と共に抱えてきた貧困、格差、戦争(紛争)などの
問題や資源、環境(今作に於いてはケスラーシンドロームのようなデブリの連鎖的衝突→自己増殖の危険を提示している)などの現代的問題。
それらが宇宙進出によって地球に置き捨てられ、或いは新たに
出てきたことによって、人類の行く先はより複雑で解決しがたい
ものとなっているように感じた。
様々な問題。
この作品で提示されたこれらの問題を抱えつつ、人類は
探究心、好奇心といった根源的な欲望、その業のようなもの
によって先に進まずにはいられない。(宇宙開発、探索など)
ストーリーは後半に進む程、これらのテーマ性の強い内容、展開
で、自分にはかなり極限的な鬱展開に感じた。
果たしてどの道がを辿るべきなのか?
或いは進むべき道に正解など存在しないのか?
そんな中で自分が最も心を揺さぶられたシーンは。。。
{netabare}
12歳の純真な少女ノノ。
テロリストのハキム。
最も対極にいるサブキャラ2人の月面での対峙シーン。
ノノ 『ねえ、何してるのぉ?ここでぇ』
武器を携帯したハキムがノノに近寄り言う。
ハキム『みんなが汚したとこを綺麗にするんだよ』
『宇宙はごく一部の国が独占する世界となってしまった!』
『それは正すべきだろ?やり直すべきだろ!?』
『全ての国をあるべき姿に!!』
ノノ 『国?うん、ちゃんと習ったよぉ。そういうので分かれてる んだってねぇ?地球はぁ?』
ハキム『うっ??』
ノノ 『私ねぇ、ルナリアンなの。月生まれの月育ち。だから国
とかって見たことないんだぁ。』
彼女の言葉に愕然とし、構えようとした武器を降ろすハキム。
ノノ 『おじさんの国は地球のどこにあるのぉ?』
『ここから見えるぅ??』
何も知らない無邪気なノノに促されるハキム。
邪魔するもののない月面から2人で地球を見下ろす。
宇宙の暗闇に青々と輝く地球。
ハキム 『確かに、確かに見えないな、そんなものは。。。』
ノノ 『ん??』
不思議そうにハキムを見つめるノノ。
ハキム 『だがしかし、それでも私は。。。』
踵を返し、力なく立ち去るハキムと不思議そうに見送るノノ。
結局、それでもハキムはテロによる世直しを盲信する自分を
捨てられないのだろうけど。
もはや制御を失ったテロリストの怒りは、この無垢な少女によって
鎮められたのは確かなこと。
この作品における後半の鬱展開、自分としても行き場のない
感情を鎮めてくれたのはこのシーンだった。
そしてふと思い出した。
主人公の教官だったギカルト先生。
彼はあだ名をつける名人なんだけど、少女ノノにつけたあだ名。
アルテミス。
ギリシャ神話の月の女神。
この作品でそれぞれの人物達が己の信じる道を辿る中で
ただ一人超然とした存在のように見えた少女。
個人的な解釈だけど、それぞれの道、選択にはある意味で正解も
不正解もなかったように思う。
現実に於いての人類がそうであるように。
そんな中でこの物語に唯一、真実を告げる者としてこの少女が
存在していたのかなと思う。
{/netabare}
といった感じで強いテーマ性を持った作品だけど、コメディ要素
や恋愛要素、名言も充実の本格(JAXAもバックアップw)宇宙モノ
です♪