STONE さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
思いを伝えるということ
原作は未読。
他人と関わることが苦手な白鬼院凜々蝶が自分を変えていこうとする話、といった感じで
テーマとなる部分はシリアスなものだが、全体的作風はコメディタッチ。
凜々蝶がなんとか自分の気持ちを伝えようとして悪戦苦闘する様は、彼女の心情を思えば
大変なものなのだろうが、その空回り感がコミカルに描かれている。
それを受け取る側である妖館の住人はかなり濃いキャラの面々で、彼らのドタバタ振りは
かなり面白い。自身の行動はボケである凜々蝶だが、ここでは一転してツッコミ役といった
ところ。
この住人達、特にいじり系の連中は一見やりたい放題といった感じだがその実、他者の思い
などはきちんとくみ取れており、凜々蝶はよく心にもない悪態をついてしまうが、彼らは
ちゃんと凜々蝶の真意が判っている。
そんな住人達の存在は少なからず凜々蝶の人間的成長に影響を与えているみたい。
一方、シリアス部分では凜々蝶と御狐神双熾の心の動きを中心に描かれているが、気持ちを
言葉にすることが苦手な凜々蝶、態度こそ笑顔を絶やさないが真意を隠し続ける双熾と、
いずれも言葉=気持ちではないため、表情や態度で語るといった演出が印象的だった。
この辺は止め絵を生かした作画で、きれいな印象もあって結構好みでした。
序盤から異常なまでに凜々蝶を慕う双熾。
この作品ではSM判定の青鬼院蜻蛉、メニアックの雪小路野ばらが変態キャラとして登場
しているが、実のところ双熾が一番の変態なんじゃないかと。
この双熾が何故そこまで凜々蝶を慕うのかが謎のまま話は進み、11話でその過去が
語られるかに及んで、謎は明らかになる。
この11話がこの作品の転換ポイントといった感じで、主人公に対する異常なまでの思いの
理由が過去を描くことで明らかになる点、他の回と異なってOP主題歌をラストに持ってくる
構成、そうすることでそれまで主人公の心情を描いたものだと思われていたOP主題歌の
歌詞が、別の意味を持っていることが明らかになる点など、「魔法少女まどか☆マギカ」の
10話に通じるものがある。(別にパクリだと言っているわけではなくて、むしろ演出、構成
共に凄く評価したいです。)
結局、生い立ちやその後の生き方こそ違うものの、他者から理解されない自分を唯一判って
もらえたという点で、凜々蝶と双熾は似たもの同士だったのかな。
最終話では、手紙を間違えたというトラブルがきっかけだったものの、それまで出せ
なかった勇気を振り絞って自分の思いを双熾に伝えた凜々蝶。
この辺はお互いの気持ちが通じ合い、きれいに締めてくれた印象。ただ敢えて一歩引いて
意地悪な見方をすると、この二人の恋愛はちょっと相手への依存度が高いかなという感じ。
先祖返りという設定により、一種の妖怪ものである作品。
コメディ部分やバトル部分はその要素が生かされているが、キャラ同士の関係性を中心と
したストーリーの骨子部分においては、別に妖怪うんぬんといった設定は別になくてもいい
感じで、単なる名家同士の設定でも充分に成り立ってしまう。
この辺はちょっと勿体ないかなという印象。