たつじん さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「化物語」を超えた!
まず第一印象は「化物語」を超えた~!です。
確かにエンターテインメント作品としては「化物語」の方が楽しめますが、この作品で描く心理ははるかにそれを上回っていると思います。
人の中に潜んでいる「黒い人格」。
何かをきっかけに現れるが、それは決して自分の外にあるものではなくて、自分の内なるところに密かに巣食ってる部分。
羽川つばさの表の人格は、誰かもが品行方正と認める「優等生」で表されますが、それは羽川つばさが意識して作ったものではなく、彼女が育った家庭環境の中、彼女なりに生き抜くための処世術が生み出した産物で本質ではないんですね。
裏の人格は意外に冷淡で執念深い部分を持っているのかもしれません。
だって「猫」ですから・・・
だから、死んだ猫が憑依した「さわり猫」ではなく、羽川つばさそのものが「黒い人格」である怪異に支配されてしまうことに・・・。最後に「ブラック羽川」という言葉で表されていましたが。
実の親でないにしろ殴られてもなお、怒りではなく「ダメだよ・・・お父さん。女の子の顔を殴ったりしたら・・・」という諭す言葉しか発せない彼女自身の人格に問題があるのです。
まだ大人になりきっていない高校生が発する言葉にしては自分を押し殺しすぎてて・・・。
それと最後、暦の言葉「あいつのことをすきだなんて、一生言うことはないんだから・・・。羽川。羽川。羽川さん・・・。」の裏には・・・?
個人的には暦の気持ちは「好きな存在」を封印して「大切な存在」に昇華させたのでは・・・と思いました。
彼女の気持ちを考えず自分の気持ちを一方的に押し付けることは、彼女を追い詰めることになる・・・弱い心を持つ「つばさ」を見守ってあげたいという暦の優しさが、彼女を別格な存在にすることにしたのだと思います。
こんなテーマのストーリーで暗くなりそうですが、そこは作り手の技術・演出のすばらしさがカバーしており、バトルシーンは迫力満点、血しぶきまでもが美しく見えてしまいます。
またブラック羽川の下着姿やファイアーシスターズとの絡みのシーンはエロ描写と見るのか文学小説にある女性美への憧憬と見るのか・・・。
見る人の主観によって変わるのでしょうね。
このシリーズの象徴でもある会話劇も、忍野メメと暦・ブラック羽川と暦 と「化物語」にもまして長い台詞で深かったですね。
またその場面の1カット1カットが目まぐるしく変わり、凝った作り方にこだわりを感じました。
劇場で公開してもおかしくないような・・・。
自分の中では「化物語」を超えた。そんな作品でした。