じょー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
羽川翼にみるヒロインの序列
化物語、傷物語、偽物語、猫物語(黒)と作品の展開がつづいていきましたが、西尾維新氏がファーストシーズンと名付けた物語の最終章。時系列的には、春休みである傷物語の後、化物語の前、化物語作中で何度も言及されていた、ゴールデンウィークの暦と翼の物語。
傷物語の映画化の前に猫物語が公開されてしまうのは、少し残念な気もしますが、アニメの時系列として、化、偽、猫(黒)そして傷というのは、かえって面白いかも知れません。ただ、個人的には、物語シリーズ最高傑作と思ってるセカンドシーズン序章。猫(白)の前には是非とも傷を映像化して欲しい所。これが逆ではあまりに物語に面白みが欠けてしまいかねます。
羽川翼であることが、暦の救済の動機であることが、化物語での他の4人のヒロインと異なります。羽川翼に対する思いを表現する為に、使われる言葉の「欲求不満」という言葉が、月火との会話での伏線です。暦はこの言葉に縛られて行くのですが、ここが、時系列で、傷、猫(黒)と、化のファーストシーンと完全なる羽川翼の世界を作り上げて、唯一無二のヒロインであったはずの、羽川翼の隙であり、ひたぎにかすめ取られて行く伏線です。そして、ラストシーンは階段に見えるひたぎという終わり方がヒロインの交代を示唆して非常に印象的でした。
そして、この「欲求不満」という言葉こそが、阿良々木暦のカッコ良さの象徴だったかと。動機は羽川に対する欲情で、欲求不満であり、自分勝手であるからこそ、だれがなんと言おうと羽川を助ける。偽善者であることをことさらに強調しながらも、命まで捧げようとする。「欲求不満」という言葉は、この自ら積極的に認めた偽善者故の行動と、その潔さを印象づける言葉であったと思います。ここら辺の表現の仕方は原作よりアニメの方が良かったですね。
少し脱線して、下記のサイトにて、ヒロインの序列について議論がなされていますのでご参考までに。第一ヒロインが負けてしまう物語が形成するまでにどのような流れがあったのかという、お話です。
天元突破、雨宮ゆり子
http://www.tsphinx.net/manken/room/clmn/j_amemiya1.html
これをベースに、Ustreamのこちらの議論(羽川翼におけるヒロイン論)
http://www.ustream.tv/recorded/8456799?lang=ja_JP
にて、かなり熱い議論がなされています、長いですが、物語シリーズをお好きな方と、羽川派の皆様には是非聞いていただきたい議論です。そして、第一序列ヒロインは物語シリーズにおいて誰なのかについて、少し考えて頂ければと思います。この時点、少なくともファーストシーズンにおいての、作者の第一ヒロインは翼、第二ヒロインは忍で、そして第三ヒロインでしかないひたぎがメインの恋愛対象という所が、段々と見えてくるという所が、物語シリーズの面白さかなと。
アニメの方は、相変わらず物語シリーズ独特の、シャフトらしい演出が冴えていたなと思います。文句を付けるとすれば、暦の羽川家不法侵入のシーン。原作を読んで居て、物語シリーズで最も恐怖するシーンなだけに、ここの描写が意外にあっさりだったことががっかりでした。前半の会話劇を上手く削って、4話にまとめた所は好感です。正味の話は十分4話で収まる話だったので、ここはテンポ良かったと思います。
ちなみに私は、もちろん羽川派です。傷物語、猫(白)が楽しみです。