みかみ(みみかき) さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
エスパー。
安心の夏目。
にゃんこ先生はあいかわらずツンデレしており、素朴に楽しんで最後まで観た。
*
それにしても、少女漫画的理想郷みたいなものが、これほどまでにビシビシと伝わる作品というのもないのではないか、という気がする。前にも、まったく同じことを書いたけれども、夏目友人帳というのは、わたしにとっては
「実際には決して到達し得ない、博愛主義者の夢の国」
を描いたパラダイスマンガだと思っている。
同じ心理描写の水準。同じような「思いやり」にあふれた人物同士の交流を描いていても少女漫画のヤキモキ系恋愛沙汰だと、なんか、こう、
「あー、はいはい。おまえら早くくっつけよ」みたいな気分になったり、
あるいは、少女漫画にありがちな「相手のことを思いやったことで、相手を誤解してしまってトラブルに…」みたいな、博愛主義の「失敗」そのものを描いていることがけっこう多い。
まあ、そっちのほうがリアルだし。
話の中だるみも抑えられるし。(※1)
そういうことで、少女漫画ってここまでホンワカしない。
なんだけれども、夏目はほんとうにすごい。
少女漫画的世界観が基底にありつつも、少女漫画的な事件のロジックを無視することができている。
たとえば、7話の田沼の泣きっぷりとか、…萌える…!!
{netabare}
夏目「ありがとう」
田沼「…夏目…っ…?」
夏目「田沼のおかげでビンから出られた。おみばしらも封印することができたんだ。田沼が力を貸してくれたおかげだ」
田沼「本当に…本当のことを言ってくれ…。」
夏目「田沼…?」
田沼「オレが踏み込んだせいで、
夏目の負担になったんじゃないか?
オレのせいでおまえを苦しめたんじゃないか。
オレ、あんまり人付き合いうまいほうじゃないし、
聞きたいことがあっても
どこまで踏み込んでいいかわからなくて、
力になりたいけど、どうすればいいのかって…」
夏目「それは…」
田沼「嫌だったら、そう言ってくれ」
答えたくないことは答えなくてもいい。
夏目が妖怪が見えるって話してくれたのに
そのことをやっぱり話さなければよかったとか
そのせいで壁ができるのはイヤなんだ
…せっかく話してくれたのに、それは辛い。」
夏目「…田沼……ごめん…田沼…ごめん」
(どうすればいいんだろう…。どうしていけばいいんだろう…。それは多分、名取さんが諦めてしまった道。レイコさんが歩きたくても歩けなかった道。おれは行けるだろうか…)
{/netabare}
みたいなやりとり。
こういうのは、もう、ほんとさ、そうじゃないよ。ふつう。
田沼がちょっといじらしい、というのもあるけれども、
相手のことをおもいやった挙句に、泣く…とかさ。
いい奴すぎる……っ!
こういうのはある種のエスパーっつーか、
相手の気持ちとかをこれだけ忖度するとかできないですよ。
むりむり。
特に、わたしは超無理。
自分はある程度いじょうに変な人だと思っているので、<自分が感じるようなこと、を相手が感じるだろう>と、いう思考回路をすること自体を諦めてしまっているフシがある。
こういうタイプの相手の心情の忖度の仕方って、日本の少女漫画的文化以外で、海外だとどのぐらいメジャーなのだろうか。韓国とか、比較的「単一民族神話」が生きている場所だと機能しやすい気がするけれども、アメリカとかみたいな場所だとどのぐらい、こういうのってあるのだろうか。
こういうタイプの心情忖度ができるというのは、本当に、すばらしい。すばらしすぎることだとは思う。
泣ける。ある種の日本の少女漫画が培ってきた、何かだろうとは思う。
海外にもヒューマンものは数あれど、こういう心情の忖度の仕方をする、という形式での感動を与えようとするものは数少ない。すごいものだ、と思う。本当に。
※1
夏目友人帳の場合、一話完結形式だからこそ、中だるみを意識しなくても、比較的どうにかなるのかもしれない。