STONE さんの感想・評価

3.8
物語 : 4.5 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

人というものの不条理さ

　3期ともなると、地獄流しを巡る各話の展開はいずれも捻りの入ったものばかり。2期も
そういった傾向にあったがそれに拍車が掛かった感じで、1期に見られたような地獄に流す
側が可哀想な人で、流される側が悪い人といった単純な図式はほとんど見られない。
　そのため以前は地獄に流した者も死後は地獄に堕ちるという鬱展開はあっても、悪人が
地獄に流されることで得られるカタルシスがあったが、本作はそういった要素はほとんど
なく、とにかくやりきれなさが募る感じ。
　そういった意味では1期、2期以上に見る人を選ぶような作品になっているが、その分
今まで以上に人間の不条理さがよく描かれている。

　本作では第二の主人公とも言うべき御景ゆずきの存在が大きい。
　地獄流しと止めようと奔走する様は第1期の柴田親子を思わせるものがあったが、終盤に
おいて明かされる彼女の正体はちょっと驚くもの。
　ただゆずきが幼い頃にとっくに亡くなっていた存在だとすると、各話でゆずきがやり取り
したエピソードは何だったの？とも思ってしまう。まあ、科学的ガゼットを駆使したSFもの
だとこの辺はかなり気になってしまうが、この作品は割と雰囲気勝負みたいなところがある
から、個人的にはこれはこれでいいかという感じ。
　ゆずきが死に至るまでの展開は見ているのが辛くなるぐらい悲惨なものだが、それだけに
自身の真実を思い出したゆずきがそれまでの態度を一変させて地獄少女になることは至極納得
させられるものがある。しかし、それはゆずきが怨みという呪縛に囚われることになる。
　最終話で閻魔あいが地獄少女になることでゆずきは救われるが、ここまでくると3期の話
そのものが、あいがゆずきを救うための仕掛けだったように思えてしまう。
　
　1期の柴田親子のような、あい達と地獄流しに関わる人達の間に位置するような存在が
2期ではいなかったため、輪入道、一目連、骨女自身がその役割をこなしていた。その分
2期では彼らがクローズアップされることも多かったが、本作ではゆずきという存在がいた
ため、輪入道達の影を薄くなってしまった。
　それなのに山童という新キャラが増えたりしたが、正直なところこの新キャラは別に
いなくても良かったような。

　地獄に流す描写は2期ぐらいから笑いを取る方向に向かい始めたが、本作はその傾向が更に
強くなっている。
　作品自体がより鬱化しているので、せめてここで笑いましょうということなのかな？
　変なシチュエーションに身を置きながらも、淡々とした態度は終始変わらないあいが
面白い。