Tuna560 さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』作品紹介と総評
荒川弘の同名漫画のアニメ化作品。
2003年に一度アニメ化されているが、本作は新たに一から作られている。
前作レビュー:http://www.anikore.jp/review/417635
(あらすじ)
錬金術が存在する架空の世界を舞台としたダーク・ファンタジー作品である。物語の世界は、19世紀の産業革命期のヨーロッパをモチーフにしており、科学技術は時代とほぼ同水準の設定となっている。(wikipedia参照)
前アニメシリーズは原作のストックの都合、後半からは完全オリジナルとなっているのに対し、本作は原作を忠実に描いている。原作、前シリーズからのファンの目線としては、第1話のオリジナルストーリーはとても意外で、新鮮みがあって良かったと思います。また、テンポの良いストーリー展開とわかりやすく練られたシナリオは、初見の方にも観やすいのではないかと思います。
この作品の魅力を一言で表せば、”個性豊かなキャラと終盤に向けて張り巡らされた伏線のオンパレード”でしょう。特に、登場するキャラのほとんどが終盤に絡んでくる展開は、まさしく怒濤のクライマックスでした。
また、個性的なキャラによるコミカルなやりとりも、シリアスなストーリーをより際立たせている。「泣けて、笑えて、感動して」というよくある謳い文句は、この作品にこそふさわしいと思います。
ちなみに、最も好きなキャラは、エルリック兄弟の師である「イズミ・カーティス」です。
また、劇中の音楽も前作に比べとても良くなっていると思います。『機動戦士Vガンダム』の音楽なども手がけた千住明が担当し、元々クラシックに携わっていたこともあり、荘厳な雰囲気が作品と良くマッチしている。
この作品では、色んな要素が含まれており、話し出せば正直キリがないです。その中でも、「死生観」や「人間の定義」が大きく取り上げられている点について色々と考察しました。
・死生観について
特に、錬金術と生命の関係性についてです。本作での錬金術の重要な要素として「一は全、全は一」という概念があります。これは、”個人は世界の一部で、全ての物は大きな流れの一部である”という考え方です。例えば、生命の誕生と死、食物連鎖がそうです。これは”自然摂理に準ずる死生観”だと言えます。
原作者は現在『銀の匙』という農業高校を舞台にする漫画を描いていますが、この死生観は作者の農業体験から起因しているものと言われています。
・人間の定義について
一つ目は、人体錬成について。錬金術では、人間は肉体・魂・精神の3つから成るとされており、既に存在しない死者や身体の一部を錬成することは初めから不可能とされている。「死者の蘇生」が不可能な点は、”神の生業は人間では出来ない”を意味しており、”人間はあくまでも人間”という事を意味していると考えられます。
二つ目は、魂だけの存在について。アルの様な「魂を鎧に定着させた身体」、キメラの様な人ならざる存在は、果して”人間”と呼べるのか?また、その境界線は一体どこなのか?エドの観点で言えば、「魂>肉体」と考えられるので、魂の有無が最も重要な要素だと思える。
そして三つ目は、ホムンクルスについて。錬金術によって生み出された人造人間のことを指し、人間を愚かな存在と軽蔑し、ホムンクルスを人間よりも優れた存在と見なしている。しかしその反面、”人間に憧れる”という一面が存在する。これは”人ならざる物”の視点での考え方であり、人の体に戻りたいというアルにも共通する考え方だと思います。
いやぁ、色々と書きましたが、今でも自分の考えがあまり良く整理出来ていませんね…。
とりあえず、言いたい事は「観た事ない人は観るべし!」という事です。