逢駆 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
~虚実皮膜~
人は世に生まれるもの 妖は世に在るもの
生まれるものと 在るものが
真と理を伴えば 形を得る―――――
これまで見たことのない摩訶不思議な映像表現に度肝を抜かれた作品。
一度見始めると眼が離せなくなるような忘れがたい映像の数々が脳裏に刷り込まれました。
まず、本作の前に予習として観てもらいたいのが
『怪 〜ayakashi〜』という作品のエピソードのひとつ「化猫」です。
この続編として作られたのが『モノノ怪』のため、観ていないと最初は意味不明かもしれません。
オムニバス形式の本作は、
「座敷童子」「海坊主」「のっぺらぼう」「鵺」「化猫」という5つのエピソードから成ります。
内容もシンプルでわかりやすいものから、とても難解なものまで様々です。
(ちなみにここでの「化猫」は前作のものとはまったく違います。)
そして特筆すべきはやはり圧倒的な映像美。
独特の色彩感覚や、陰影を使用しない平面的な演出は浮世絵を彷彿させ、
かと思えば、次の話では西洋チックになったり屏風絵や水墨画のようになったり…。
それぞれの話で様々な顔を見せてくれますが、一貫して本作の『色』になっていて感激しました。
雨粒一つにまで意匠を凝らし、随所に象徴的なモチーフが散りばめられ、
画がものすごく芝居をする映像面だけでも一見の価値ありです!
《もののけの〈形〉を為すのは、人の因果と縁(えにし)
真(マコト)とは事の有様、理(コトワリ)とは心の有様
よって皆々様の真と理、お聞かせ願いたく候。》
もう一つ、この作品の魅力として欠かせないのが「薬売り」という男。
名前もなければ、年齢やどこから来たのかなど、彼に関する情報は一切ありません。
この人物が妖異が現れる場所に訪れては、モノノ怪を退治していきます。
つかみどころのない彼の存在感が、強烈なキャラばかり出てくる物語をピリっと引き締めてくれました。
和製ホラーというよりはサスペンスに近かった本作。
モノノ怪を退治する場面はさほど重要ではなく、
大事なのはあくまでモノノ怪を斬るために必要な形・真・理に迫っていく過程。
そして、人間の醜さや愚かさなど心の汚い部分が
次々と炙り出されるストーリーが最大の注目ポイントだと思います。
斬新で優雅で凶暴で、とても贅沢な作品。すべて観終えて痛烈に感じたこと、それは…
『げに恐ろしきは人の性なり』
でした。