STONE さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
返すことでつながること
原作は未読。
アイテムにしろ、仲間にしろ、大概の作品は集めていく展開が多い中、こちらは返していく
という逆のパターンが新鮮で珍しい。
夏目 貴志の祖母、レイコは妖怪に勝負して勝つことで友人帳を作り上げていったが、名を
奪った妖怪達を使役することはなかったみたい。人から孤立したため、妖怪に対して
つながりを求めることになったレイコにとって、友人帳はそのつながりの証のようなもの
だったのではなかったのかな?。
一方、普通の人には見えない妖怪が見えることで、孤立を深めていった貴志にとって、妖怪
そのものが自分の孤立要因として捉え、忌み嫌う存在になったのではないだろうか?。まあ、
直接的に妖怪に追いかけ回されたりしたことも妖怪を嫌うようになった理由の一つであるとも
思うけど。
友人帳を受け継ぐことになった貴志だが、友人帳は祖母の遺品であるし、名が書かれた
妖怪を支配下に置けるという能力のことを考えると、彼の性格上、他人に譲渡することは
なかったものの、当初の名前を返す行為は「名前を返すことで、妖怪と縁を切りたい」ように
思えた。
しかし、名前を返すことで妖怪達と関わっていくことで、妖怪達との間につながりができ、
情も湧いてくる。友人帳こそ、次第に中身が減っていくだろうが、目には見えない妖怪達との
心の繋がりはどんどん増えていくのだろう。
妖怪が見える能力に対しても、次第に肯定的に捉えるようになったようで、12話での田沼
との会話にそれが現れていた。妖怪との交流だけでなく、貴志自体の人間的成長も感じられる
のが良い。
レイコにとっての友人帳が妖怪とのつながりの証なら、貴志にとっての友人帳は妖怪と
つながるためのツールのようなものだったみたい。
妖怪達との交流を描いたエピソードは心温まるものが多く、見ていて心地良い。加えて
詩情を感じさせる要素も強く、日本人の心の原点のようなものを感じさせた。
全体的には夏目のやさしさがそのまま作品全体の空気感になっているような感じ。
やさしいだけでなく、既存の妖怪モノにあるような退魔バトル的要素もあり、
エンターテイメント性も忘れていない。