たんたんたぬき さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
新鮮さ
自分の中の面白さでは今年度アナザーや坂道のアポロンの方が面白い。でも、客観的に見て今年度NO1作品なら真っ先にこれを上げる。自分でもそこそこ面白かった。(このサイトのランキングにけちをつけるつもりはない、ただ偽物語は化物語の続編に過ぎない。物語シリーズとしてみるべきだ)
私的にはまどマギよりこの作品の方が新しい時代の到来を感じさせる。まどマギが00年代の総括だとすれば、SAOは新しい時代の到来を感じさせる。基本的な部分は攻殻機動隊の流れだと思う。サイバーパンク作品をルーツにしてると思う。でもフルダイブって発想が大胆だった。発想自体はゲームの中に入れたら?って子供みたいなものだと思う。しかしその表現の仕方が上手い。常にゲームの仮想世界の中に居ますよってメッセージが所々に表現されている。台詞、ストーリー、システム、ゲーム的絵の描写。今のゲームのリアリティをベースに未来のゲームを見事に作り上げている。この世界観の斬新さは見事。エヴァで庵野監督がこれからはコピー時代と冷めた宣言をしてから随分経つ。確かにその予言どおりになったが、いよいよコピーでは飽きてきた世代の氾濫が始まってきたと見ている。この作品が革命的作品になれるか?はこの後しだい。でもこの作品は時代の要求を感じさせてくれた。もう2000年代前に作られたものをコピーするアニメに飽きてきたんだよって視聴者のメッセージを感じてしまう。
想像してみて欲しい。この作品が1980年代のファミコンの時代に登場する事。この作品がどれだけ新しいのか分かるはずだから。この作品にコピー元は無い。あるのはサイバーパンク系の電脳世界にダイブする装置だけ。
ただしこの作品には致命的な欠陥がある。ダンバイン、エスカフローネ、エルハザード、ゼロの使い魔などの異世界ファンタジー召喚ものに対して根本的な相違点が無い。ダンバインと言う異世界の召喚の世界観さえあれば他の作品はその中身を入れ替えるだけになる。SAOの背景にあるナーブギアによるネット上の仮想世界への入り口はあんまり意味が無い。そんなものは小手先だけの理由付けに過ぎない。この作品の真の魅力はゲームの中の仮想世界ですよと言う露骨な作品内のメッセージにある。この程度ではとても新しい世界の構築とは言えない。
SAOを作った真の創造主はMMOゲーム開発会社だと私は考えている。ゆえにこの作品が革命的な作品にはなる事はまず無いだろう。後続の仮想世界作品に期待したい。それを頭で考えたのではなく、この作品にはエヴァ、ガンダムの様な革命を感じさせるインパクトが最初から足りないのだ。その感情に対する理由付けをしたに過ぎない。
しかし、仮想世界フルダイブ型の魅力を紹介したという意味でこの作品は画期的作品だと思う。仮に攻殻機動隊やアクセルワールドをハーフダイブとするなら。その違いはどこにあるか?アニメ漫画には現実逃避の側面がある。その現実逃避感を増強してくれる。フルダイブの持つ密閉性、閉鎖性。ハーフダイブはアニメの中の現実を混ぜてオンオフを切り替える。リアリティがアニメの中の現実世界の中に置かれる。リアリティを吸い取られた仮想世界側には安っぽい現代的なゲーム臭さを感じてしまう。リアルではないが、リアルである。この境界線の曖昧さがフルダイブの魅力。だからこそプレイヤー達の生死に一喜一憂できるし、ドラマにリアリティがある。
SAOはエヴァガンダムの様な死ぬ事が当たり前にある世界観に魅力があり、作品としての面白さは落ちるが、妖精国編も素晴らしいものを持っている。ただ飛ぶだけが面白いゲームになるってアイデアが素晴らしい。想像してみて欲しい。人類がイカロスの頃から恋焦がれた飛ぶ事の欲求をこのゲームは満たしてくれる。リリエンタールはただ飛ぶそれだけのために命を懸けて死んでいった。ただ飛ぶそれがどれだけの魅力があるのか?それをこの作品は教えてくれる。将来電脳世界に直接入り込むシステムが出来たら、ただ飛ぶゲームが爆発的にヒットする可能性をこの作品は示唆してくれた。素晴らしい未来予測だと思う。
絶賛の割りに評価は低い。私は80年代にアニメの魂を置いてきてしまってるので、この作品の真の価値が分かるのは今の若者の特権だと思う。私が書いたこの文章は主観的にちらっと感じる刺激を増幅させた意見に過ぎない。私の文章には魂から発せられる熱が無い。