Ryuvay さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
グリの街という不思議な世界 ~長文考察
灰羽とは未練を残して現世を去った少年少女や幼い子供たち
灰羽たちの名前 ─ 繭の中で見た夢 ─ 死の直前の強い思いの情景 ─
ラッカは空から落ちる夢、クウは空を飛んでいる夢、ヒカリは光を見る夢、ネムは眠っている夢、カナは魚のように水の中を泳ぐ夢。
それぞれ落下死、爆死、昏睡状態からの安楽死、溺死などが考えられる。
レキは小石が敷き詰められた道を歩く夢⇒列車に轢かれる ──轢死の「轢」と瓦礫の「礫」
「クラモリ」は 暗い森⇒樹海⇒遭難ということが考えられます。
「ヒョウコ」は 氷湖⇒凍死、またはそのままの意味で凍った湖での溺死と言うイメージがあります。
「ミドリ」は漢字次第でいろいろ変わってしまうため割愛。
その中でも、「罪憑き」は「自殺者」と考えられています。
自ら命を絶つことは現世を諦めずに懸命に生きる人たちにとっての冒涜であり大罪です。
灰羽の羽根が灰色なのは、悪魔でも天使でもない霊的な存在だからだと考えられ、罪がある「罪憑き」は悪魔のように黒色になるのでしょう。
ラッカとレキは「罪憑き」でした。
このことから、ラッカは単なる落下死ではなく投身自殺、レキは列車による轢死自殺であることが窺える。
このレキについては、細かい描写があるので考察はしやすい。
生前、何もかもを投げ出し、救いの声をあげることすら諦めた。
結果的にそれは、「本当にそれでよかったのか?」という自問自答を延々と繰り返すことになり、良い行いをすること ─自分にとっては偽善─ でその自問自答から逃げているとも取れます。したがっていつまでも「罪憑き」から脱することができない長い時が過ぎ、ついには「やっぱりダメなんだ」とまた諦めてしまう選択をしたのではないでしょうか?
これはレキの物語を通しての行動にも表われています。
それが、自分自身を縛り付ける精神的な枷 ─生前と変わらない、何も成長していない自分自身の子供姿─ として表われています。
しかしそれらは、ラッカにとっては救いを求める「声無き声」に見えたのでしょう。
そして最後に、自分が独りではないんだと、救いを求めれば助けてくれる仲間 ─ラッカ─ がいることに気がつく。
「・・・・ラッカ・・・・・・・・・・・助けて・・・・・!!!!」
この台詞にそれら全てが詰まっているようにも見えます。
ラッカの場合、何も良いところがない自身を責め、生前の過ちを繰り返してしまっているようにも見えます。
そしてそんな自身が許せなかったし、生きている意味 ─存在理由─ も失ってしまっていたのでしょう。
それを救ってくれたのはいつも気にかけてくれていたレキでした。レキの良い灰羽であろうとする姿(当人にとっては偽善行為でしたが)がラッカを ─良いところがなくても自身にできることはあると、むしろそれが自身の良いところなんだと─ 救ったのでしょう。
鳥はこの世界にとってトーガ以外の唯一外と行き来できる生き物であることから、ラッカが落ちた井戸で死んでいた鳥は、ラッカが死んで悲しんだ人の気持ちが鳥となって壁の外からやって来たと考えられます。
この鳥が一般的に死神の遣いとも言われているカラスであり、しかしカラスと断言していないところは、暗いイメージ払拭しつつ、かつ死の遣いを連想させるあたり意味があるように思えますよね。
オールドホームの幼い子供たちについて
彼らの名前の由来としは、劇中で「将来の夢」だと説明しています。
ダイは「大工さん」、ハナは「花屋さん」などと言ってます。ショータにいたっては将来の夢ですら無く「ショートケーキ」だと言ってます。
もしかすると、幼くして死んだ小さな子供たちにとっては、死の情景と言うのがあまりにも薄い、「死」自体を理解できないため、夢⇒将来の夢⇒生前に思い描いていた将来の夢ということなのでしょう。
だとすると、ショータは「ショートケーキ」すら食べることができなかった、短い人生。貧困または身体的障害によってまともな食事すらできなかったことが窺える。
そう考えると、「将来の夢」だと説明はされていますが、本当にそれは子供たちが繭の中で拙い精神で見た夢の情景であり、幼い子供の灰羽たちは餓死や病死、虐待を受けた「死」という概念を理解できないままに死んだ子供たちだと考えられます。
謎のひとつである話師について
レキは、偽善行為を行い続けた結果、途中で諦めて自ら消えることを選びました。
(最後の最後でラッカに救いを求めることで自身を許し巣立っていきました)
話師は孤独であり今となっては救いを求めることができる仲間さえいない──この話師はおそらく自問自答し続け、結論を出せないまま、やはり同じように連盟という名のこの世界全てを守るという偽善行為を続け、それはさらに、自身の行為が正しいのか正しくないのかという自問自答を上乗せされ、自身を許せないままグリの街で老いてしまった姿なのではないでしょうか?
まとめると
グリの街とは、「生」と「死」/「天国」と「地獄」の狭間の世界。
未練を残して現世を去った少年少女や幼い子供たちにとっては最後に与えられた機会であり救済の世界。
「罪憑き」の灰羽たちにとっては、優しさに包まれたこの街で精神を癒し、再び生きていくことの試練を与え、己を戒め振り返り、改めることのできる最後の機会であり世界なのでしょう。
救済されなかった灰羽は、そのまま負のイメージに飲み込まれ ─地獄─ へと「消滅し」、救済された灰羽は、壁の外 ─天国─ に「巣立って」いくのでしょう・・・・。