STONE さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
楽しくもせつない、一夏の出来事
あるキャラが思いを寄せる相手は別の人が好きだったり、勘違いから始まる心のすれ違い、
やたらとキャラが妄想したり・・・と日常ラブコメの定番。
異世界から来た女の子が、普通の男の子と恋に落ちるというパターンもSFファンタジー系
ラブコメではよくある展開。
かなりベタと言うか、王道と言うか、そんな印象だが、逆に言えば安定感はある。
タイトルにある通り、ストーリーはある一夏の出来事を追ったものだが、夏は開放感が
ありつつも、暑さからくる気怠さや憂鬱さもあり、その躁鬱感がある時は恋に心躍り、
ある時は恋に悩むキャラ達の心情とシンクロして、非常に夏らしさを感じる作品になって
いた。
序盤から中盤は、自主映画制作をベースに、好きな相手がいてもなかなか行動に踏み切れ
ない5人の男女の葛藤が描かれているが、この複雑な恋愛模様から離れた存在である
山乃 檸檬の存在が異彩を放つ。
この檸檬、行動面に関しては人の恋路を応援しているのか、邪魔しているのかよく
判らないが、要するに単に面白がっているのかな。ただ、彼女の行動が自分の気持ちに正直に
なれないキャラを動かすきっかけとなっていることも多く、結果的には応援しているみたい。
沖縄を舞台とした中盤は話数こそ2話だけだが、ここで登場した樹下 佳織と有沢 千春に
より、それまで膠着状態であった5人の関係が一気に動き出した感じ。
そこから後半は、それぞれが自分の気持ちを拠り所にどんどん行動的になってくるが、
ここで印象的だったのは、それぞれが他人の発言や行為に触発されて行動に踏み切るところ。
霧島 海人は檸檬の助言、貴月 イチカは谷川 柑菜の叱咤、柑菜は石垣 哲朗の行動、哲朗は
海人の態度、北原 美桜は哲朗の発言といった具合に。
互いに相手を人間的に成長していく感じで、報われるか報われないかは別にして健全な恋は
えてして人間を成長させるもの。それがよく描かれていた。
キャラに関しては最初にキャラ絵だけを見た時は、あまりパッとしない印象だったが、
これが動き出すことによって、次第に魅力的になってきた感じ。ただ、なんであんなに
眼鏡率が高かったのかは未だに謎ですが。
イチカが宇宙人という設定は、イチカ自身が自分の気持ちに正直になれないフック的要素
だけの感じだったが、終盤になるとこの設定の比重が大きくなり、話はかなりSF寄りに。
終盤の救助ポッドとのチェイスに至ってはアクションものにさえなっていた感じだが、
バトルもの、冒険ものによくある「ここは俺に任せて、お前は先に行け」パターンは結構
燃えた。
この話の広げ方は日常的恋愛モノとして見ていた人にとっては不評だったかもしれないが、
個人的には結構好きでした。
割とせつない終わり方になりましたが、救いのある結末の表現方法はちょっと粋な感じで
好き。
以前、「たまゆら〜hitotose〜」のレビューを書いた際、今の時代に敢えて銀塩カメラを
使う効果を書いたことがありますが、この作品における8mmカメラも同じような位置付けに
ある感じ。
単にノスタルジーを感じさせるだけでなく、すぐに撮影結果が確認できないことを逆手に
取っている。これは映像確認のためにキャラ同士が集まる機会を増やすという
コミュニケーションツールとしての役割も果たしているし、間隔を空けて映像を見ることで、
撮影時と鑑賞時の状況・心情の変化をより際立たせてくれる。それが最大に生かされたのが
最終話のイチカが去った後の上映会だろう。
コミュニケーションツールと言えば、携帯やPCなどを出さなかったのも印象的。最近だと
「アマガミSS」、「謎の彼女X」なんかもそうだったが、簡単に連絡が取れないことで
活きる展開というのはある。