Tuna560 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
『おおかみこどもの雨と雪』作品紹介と総評+考察「細田守の描く自然」
『おおかみこどもの雨と雪』
細田守監督による長編オリジナル作品第2作。
前作『サマーウォーズ』と打って変わり、とても静かで暖かい物語です。
テーマは「親子愛」。
19歳の少女・花が「おおかみおとこ」と出会い、その間に生まれた「おおかみこども」の姉弟の成長から自立するまでの13年間を描いています。
(あらすじ)
東京のはずれにある国立大学に通う、女子大生の花は、大学の教室でとある男と出会い、恋に落ちる。その男は自分がニホンオオカミの末裔、「おおかみおとこ」であることを告白するが、花はそれを受け入れ2人の子供を産む。産まれた姉「雪」と弟「雨」は狼に変身できる「おおかみこども」であった。しかし雨の出産直後、男は亡くなってしまう。
花は2人の「おおかみこども」の育児に追われるが、都会ではたびたび狼に変身してしまう雪と雨を育てるのは難しく、山奥の古民家に移住するし、人の目を気にすることなく山奥で姉弟は育っていく。(wikipedia参照)
蛇や猪をも恐れない活発で狼になるのが好きな姉の「雪」。
恐がりで臆病でとても内向的な弟の「雨」。
二人の対称的な兄弟は自然豊かな田舎で成長し、やがて学校に通う様になる。
しかし、このことは二人を対称的に成長させる…。
母親である花は勿論、雪と雨の心理描写や苦悩の表現がとても繊細で、物悲しくも感動のストーリーに観入ってしまいました。また、田舎独特の懐かしい風景に加え、季節が変わることによって様変わりする風景はとても奇麗です。
(11/21:記載)
さて、本作ではもう一つ”自然”というテーマが描かれています。
この点を宮崎駿監督の作品と比べる事で少し考察してみましょう。
テーマは「自然の描写」です。
{netabare}宮崎監督作品(ジブリ作品)では自然の描写だけでなく「凶暴な自然との共存」がテーマとして扱われる事が多いと思われます。例えば、『風の谷のナウシカ』での腐海や王蟲、『もののけ姫』のダイダラボッチや森の主などがそうです。「たとえ、凶暴で残酷な存在であっても、人間は自然と共存しなければならない」というメッセージが込められた作品作りをされています。
一方、細田監督の本作において描かれているのは「偉大なる自然との共生」だと思われます。二人のおおかみ子供は、狼として自然の中で生きるか、または人間の生活を選びその環境で生きるかを選択します。この点で「自然との共生」というテーマは、上記のジブリ作品とも共通しています。
しかし、”自然の魅せ方”という点で大きな違いがあると思います。
それは”暖かい自然の描写”です。例えば、四季折々の森の風景描写や、田舎の田園風景であったり、田舎に暮らす人々との団欒であったり。自然は自然でも、”畏怖の対象”ではなく”寛大な自然”として描かれていると感じ取る事が出来ます。
テーマが共通していても、自然の描写の仕方が違うだけでここまで作品の雰囲気は変わるのですね。
「ポストジブリ」は伊達ではありません! {/netabare}
(2/28:追記)