mikura さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
宇宙を舞台にした歴史群像劇の傑作。
自由惑星同盟、銀河帝国、フェザーン自治領という3つの勢力間の外交、戦争、謀略、そしてそれぞれの勢力内での政治、人間ドラマなどが重厚に描かれる超大作。
野心、宗教、イデオロギー、そして恋愛や嫉妬といった様々な動機で多くの登場人物たちが行動し、陰謀をめぐらせ、結果として戦争やテロといった事象につながり、歴史を作っていきます。
内包しているテーマが緻密で多岐にわたり、架空の物語でここまで完成度の高いものは空前にして絶後であるように思います。
とはいえ、やはり一番の見どころは艦隊戦でしょう。よくあるSFもののように、超兵器やスーパーロボットで一網打尽ということはなく、一個艦隊1万5千の戦艦、空母、補給艦、輸送艦といった艦船が、基本的にレーザーやミサイル、艦載戦闘機などで地味に数を削りあって戦います。
だからなんといってもまず、敵より数を揃えることが重要。
戦術も古代の戦争のように戦線を維持しつつ、各個撃破、包囲殲滅が基本です。
都合の良い一発逆転はまずありえないわけです。
しかしだからこそ、主人公ヤンやラインハルトの用兵の妙が味わえるのです。
ラインハルトは帝国軍内部での地位が低い頃には、少数の艦隊で多数の艦隊を打ち破る戦術の巧みさを見せますが、元帥、皇帝となるにつれ、戦略を描ける立場になると、戦争の基本通り大艦隊でことに臨みます。
いっぽうヤンは自由惑星同盟自体の国力やいち軍人という彼の立場もあって、どうしても少数の艦隊で帝国軍の艦隊と戦わざるをえない場面が多くなっていきます。
戦略を戦術で覆すことは難しいと知りつつ、戦術レベルの勝利を続けていくヤンと、戦略で勝利しつつも、戦術レベルでの勝利も欲しいラインハルト。二人の思惑が一致するとき、はてさて、どうなる?
私はこの作品を観たのは今から20年くらい前、高校生の頃だったと思いますが、その頃は、帝国軍の門閥貴族アホすぎとか、自由惑星同盟の政治家腐りすぎとか、地球教の信者狂信的すぎなどと思っていましたが、その後歴史を学び、また今の現実世界で起こってきたことを知るにつけ、この作品がまさに等身大の人間たちを描いていたのだと改めて驚嘆しています。
一番好きなキャラはオーベルシュタイン。国家の安定のために数々の策略、謀略をめぐらせ、少数を犠牲にしても実利をとる。ラインハルトに対しても専制君主としてのありようなどで諫言する。
彼の登場、活躍で物語にとても深みが出たように思う。ラインハルトも彼を嫌いながらも功績は認め、重用したというのがとても良い。