mikura さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
タイムトラベルものの傑作。
この作品はゲームもプレイしました。
電子レンジの改良実験をしていて、偶然過去にメールを送ることに成功してしまった主人公オカリン。その瞬間、微妙に世界の状況が変わり、過去が改編されていることに気づく。
オカリン以外の人々の記憶も再構成されている。
オカリンだけが、その特殊能力「リーディング・シュタイナー」によって世界改編前の記憶も持ち続けている。
作品は一貫して、記憶を保ち続けるオカリンの主観で描かれる(つまり視聴者の主観と同じ)ので、結構ややこしい過去改編が何度起こってもそれほど混乱することなく、シナリオにのめりこみます。
オカリンが主催する「未来ガジェット研究所」にて、天才脳科学者牧瀬紅莉栖、スーパーハッカー橋田至とともにタイムマシンの可能性を議論し、実験を繰り返す序盤の部分から実に面白いです。
物理理論を駆使してタイムトラベルの矛盾と実現不可能性を説明するクリスですが、実際に過去にメールを送れることを見せられて彼女も実験に夢中になっていく。
オカリンは過去にメールを送れることを利用して、宝くじを当てようとしたり、その他ラボメンの希望することを安易にかなえてあげるのですが、それが後々重大な事態を引き起こしていくのでした。
これは既存のタイムトラベルものの集大成のような作品になっていて、
過去にメールを送れる「Dメール」、
過去に記憶だけ飛ばせる「タイムリープ」、
そして体ごと過去に行ける「タイムマシン」、が出てきます。
そしてこの作品のキモである、タイムパラドックスを説明する世界の仕組み。これが実にうまくできている。
小川一水の「時砂の王」の「時間枝」の概念と似ているけどちょっと違う。
やっぱり多少無理があると思わざるを得ませんが、この理論を前提とすることで3つの方法による過去改編がすんなり理解できるのです。
しかしこの作品はタイムトラベルもののロジックの面白さ以上に、シナリオの切なさが心を打つのでした。
ラボメンたちの、Dメールに込められた切実な思い。
それぞれが「願って、一度はかなえられた世界」を否定しなければならなくなっていく後半。
自分の過去は変えたくない、後悔も間違いも含めて今の自分があるからと、自分にDメールを使うことを一貫して拒否するクリス。
未来に何があっても、自分の運命は自分で決める。その時の最善を尽くすだけ。結果はすべて受け入れるという彼女の態度は、オカリンとは対局に立っている。
ゲームでもアニメでも、終わってしまうと魂が浄化されて、鬱になってしまった。
物語の世界はこんなに素晴らしく、驚愕と感動に満ちているのに、現実の毎日はなんてつまらないんだろうとか。
もちろん、つまらなくしているのは自分なんだけども。