明日は我が身 さんの感想・評価
3.8
物語 : 2.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
雰囲気は好きなのできちんとペース配分とプロット練り直してリメイクしてほしい作品
死後の世界を舞台に記憶喪失の主人公がSSSという組織に入る話。
このアニメは話の本筋と呼べるものの存在感が薄く、寄り道ばかりして尺を使っているが、平たく言えば・・・
・・・
いるかいないかもよく分からん神とやらに反逆するために、たぶん天使じゃないかな~と思われる女の子と戦って、ライブをしたり野球をしたりして、催眠術師と戦って、釣りなどをしながら、最初は敵だと思われた天使と段々仲良くなり、いろいろした結果報われずに死んだと思われていた主人公が実は報われた死を遂げていたとわかり、未だに報われずにいるみんなをこの世界から成仏させるぜ!!・・・・・・というアニメ。
作画、演出、音楽ともにお世辞抜きにトップレベルのクオリティーで素晴らしいのだが問題なのはストーリー終盤の雑さだ。
話の重要なターニングポイントになる主人公の過去編により、現在の主人公が自分が報われた死を遂げていたとわかり、未だ報われず死後の世界にいるみんなを成仏させることを決めるきっかけになったのだが・・・そんな自分でみんなを成仏させるよう努めたはずの主人公が、その後に一人だけ惚れた天使と二人で「死後の世界に残りたい」と言った場面を見てこの作品が何を伝えたかったのか解らなくなった。
また、序盤から視聴者を惹き付ける要素として働いていたはずのあの世界がどうやって誰に作られたのかという謎も最後まで曖昧な言葉で濁されてしまった。
結局、最初から答えを明かす気など無いなら1話であんな壮大なストーリーものが始まった感を出さなければ良かったのに。
またテーマである報われた死、報わない死に関係しているライブシーンや野球シーンはともかく、釣りやギルド降下や唐突に現れる催眠術師などは本当に必要だったのだろうか?
このアニメでは他に書かなきゃいけないことが沢山あるのにそれをほったらかしていて勿体なかった。
その書かなきゃいけないことの一つが「キャラの描写」だ。
ふんだんなギャグでコミカルかつ親しみやすい雰囲気を作っているのは素晴らしいが、問題はキャラの内面が描ききれてないため、いざストーリーがシリアスに動き出すと違和感が出てくるということ。
例えばこの作品の見せ場の一つである唯に日向が結婚してやんよ!という場面。
そのシーンまでにもう少しこの二人をイチャラブ方面に描いていればより感動できただろう。もしくはそのエピソードの直前まで日向が音無の活動に直接的に関わっていればまた印象は変わったかもしれないが、あれでは唐突すぎるし、せめて一緒に成仏してやれよ日向…。唯と日向という二人のキャラのバックグラウンドをもっとしっかり整えていれば今よりさらに感動できる場面になっていただろう。
また、他の例では いきなり奏を大した根拠もなく「天使」と見なして攻撃を仕掛けるユリッペとそれに疑問も持たずに従う周りのSSSメンバーの心情だ。
「天使を邪魔するわよ!」 「天使を倒すのよ!」などと言って本気で銃撃戦を仕掛けていたユリッペがどの面下げて「その子天使じゃないわよ? 気付いてなかったの ?」「奏ちゃんと友達になれるかも!」などと言えるのだろうか・・・?
そもそも憶測だけで天使と疑った相手にいきなり攻撃を仕掛ける思考がいまいち解らない。
単純に監督と脚本が作品中に見栄えの良い戦闘シーンを入れたいがためにユリッペがバカになったとしか思えない。
先ほどの釣りや、ギルド降下や、催眠術師の直井のくだりにしても、入れたいシーンをとりあえずてんこ盛りに入れるために無理に挟んだような寄り道にしかみえない。
そしてこの寄り道が無駄な尺を使ってしまったために大事な見せ場で感動させるまでのキャラのバックグラウンドを描ききる尺がなくなってしまったのだと思う。
ラスト付近のSSSメンバーのほとんどの成仏がカットされてしまったのもこの尺のムダ遣いから来ている。
ただそれでも音楽や演出は素晴らしいので、そういう要素とキャラに対する個人的な好感だけで感動できる人には名作に映るのだと思う。
個人的にはストーリーものとして見たら名作ではなくいまいち描きたい内容が定まり切れていない凡作だった。
だが、キャラアニメとして捉えるなら天使ちゃんスゲーかわいいし、日向良いやつだし、音無のツッコミもセンスあるし楽しかった。
曲も良い曲が揃ってるし耳が心地良い!
なので好き嫌いで言えばわりと好きで、だからこそ惜しい部分がはがゆい作品だった。