hiroshi5 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
無意識と意識。誕生日の境界線。自我という曖昧さを1分で表現する今敏監督晩年の作品。
私がもっとも感動した自主制作アニメ。
この作品は今は亡き今敏監督の最後の作品だとされている。
アニクリ15で出品されていて、かなりレベルの高い自主制作アニメになっている。
朝特有の雰囲気をリアルな作画、騒がしいニュース、爽やかな音楽を通して再現している。
しかし、特筆すべきはメッセージ。まずはこの動画を見て貰いたい。
http://www.youtube.com/watch?v=qYUFBnAmK28
キャラは今敏監督らしいタッチの作画で、パプリカやパーフェクトブルーを連想させる。
この作品が優れていると思わせるのは意識と無意識を半透明な二人の女性を使って表現するだけでなく、誕生日を迎えた人間がいかに変わるかをも同時に表現しているからだ。
朝、寝ぼけている時に無意識にいつもの動作をする。
私の場合、目が半分閉じていて意識がぼやけていても目覚ましを止め、部屋の電気を付け、トイレに行くという行為は日課のようにこなすことができる。
他にも、シャワーをしている時、考え事をしていても体は決まった順番で洗うことができる。
これと同じように、無意識な自我というものは日常の中に潜んでいる。
特に朝などはその典型だろう。
この作品では、その無意識を半透明の女性を使って現しているのだと思う。
そして、シャワーを浴びて意識がはっきりした瞬間、鏡の自分に向かって挨拶をする。
この作品の謎の一つである、一人目の女性が朝アラームが鳴る前から目を覚ましている点に関しては「誕生日」が大きく関係があると思う。
二人目の半透明女性は目を瞑っていることからも、二人の間には明らかな違いがある。
私の考えでは、目を開けている方が誕生日を迎えた女性で、目を閉じているのがいつもの女性。
「オハヨウ」の挨拶には意識をはっきりさせるという意味の他にも、新しい歳を迎えた自分に向かって言っている節がある。
1分でこの内容の濃さは稀に見る完成度の高さを証明している。
さすが今敏監督といったところだろうか。